.良い日【陰火/魑魅零】 ページ32
今紫色の、大きく結われた髪が風になびいた。彼女の頭上に輝く金色の角が、心細げに当たりを照らす。少女_否、少女の身をした怪しき鬼は、不愉快そうに目を細め、風の音を聞いている。
木々が揺れる音の中に、不意に奇妙な笑い声が混じる。その声はだんだんと大きなものに変化していき、たちまちけたたましい程に大きな笑い声へと変化した。
「あっはははははは!もうすぐ、もうすぐだ!ようやく、我が肉体が数字を得る。どれだけ恋焦がれたことか。嗚呼、実に楽しみだ」
ひとつ、彼女が指を鳴らせば、なんと表現したら良いものか。木々の影からドロドロとした、おどろおどろしい、ゴムのような得体の知れないスライムのような塊が出てくる。それは、やがて辺りの繭を呑み込み、影の中へと再び消えていった。
ふと、鬼がこちらを見た。目が合った、合ってしまった。少女は笑みを浮かべ、またひとつ指を鳴らした。
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『危ない危ない。逃がすところだった』
我は木の影からこちらの様子を見ていた鬼殺隊士を、血鬼術を使って拾い上げた。我が血鬼術は影を操る。血の消費が大量な分、使い勝手が良い。
鬼殺隊士の声が、悲鳴からやがてうめき声へと変化していく。
『繭でドロドロに溶けるよりはこちらの方が良いだろう?それに、我が血肉の糧となれるのだ。喜べ愚民』
今日は良い日だ。
辺り一面に人間の香りがする。
それに、累がいる。我は今日こそ、入れ替わりの決戦であの方に数字を貰うのだ。そしていつか、あの方をもひれ伏せる最強の鬼に…いや、これ以上はやめておこう。あの方に聞かれるとまずい。
先程捕まえた人間の腕をとる。ぐしゃと潰れる音ともに、うめき声がもれた。
なんだ、まだ生きていたのか。
しかし、そんなことは関係ない。やはり、鬼殺隊士の肉は引き締まってて上手い。
『嗚呼、楽しみだ。鬼殺隊士の肉は久しぶりだからなぁ。腕の次はやはり腹かな。内蔵を取り出して、まずは肝臓。次に大動脈で、その次に肺。考えるだけでもワクワクするな』
鬼殺隊士の顔が青くなる。
そう、その顔がいい。
やはり今日は良い日だ。
爪を伸ばし、腹へと持っていく。ゆっくりと爪が鬼殺隊士の腹へと沈んでいく。7センチほど沈んだところで、今度はそれを横方向に動かし、割く。
鬼殺隊士の悲鳴が耳を通り抜けた。こんなに大きな声を出されては人が来てしまうでは無いか。とこにこんな力を残していやがった。まあいい。誰か来たところで、食べてやるまでだ。
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魑魅 零(プロフ) - 更新しました (3月8日 13時) (レス) id: 9560c26e60 (このIDを非表示/違反報告)
魑魅 零(プロフ) - 更新します (3月8日 13時) (レス) id: 9560c26e60 (このIDを非表示/違反報告)
白井直(プロフ) - 更新しました! (12月23日 9時) (レス) id: 97d9ce38f9 (このIDを非表示/違反報告)
白井直(プロフ) - 更新します! (12月23日 8時) (レス) id: a16c2d859c (このIDを非表示/違反報告)
朝宮藍良@スランプ中(プロフ) - 更新しました・・・! (12月22日 15時) (レス) id: 25ee4b6236 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:迷い犬の鬼殺奇譚参加者一同 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/BNGUKMT/
作成日時:2023年10月24日 17時