【本編】迷い犬の鬼殺奇譚・改【リレー小説】

.鬼【佐藤春夫/白井直】 ページ16

安吾は「鬼がいる」と言った。
鬼ってなんだ??
角を生やした虎の柄のパンツをはいたあれ??
現実逃避をするように俺は想像を始めた。

しかし、はっと我に返る。

『星夜、怪我とかしてないか?』

まずはそこだ。俺にとって、星夜はとても大事なやつ。
失ってしまったら、それこそ俺は本当に壊れる。

「オレは平気。春夫さんこそ大丈夫?」

『ああ。徹夜明けだから機嫌は悪いが。』

「それならよかった。」

星夜がニコッと笑い、俺はほっとした。

『安吾、鬼ってなんなんだ?』

とりあえず、情報収集だな、と思い、
俺は安吾に聞いた。
この中では俺が最年長。しっかりしないと。

「えっとですね········」

安吾が言いかけたとき、きつい刺激臭がした。

『グッ!!!』

「くさっ!!」

「なんの匂いですか···?」

ゆらりと、何かが揺れて見えた。
じっと目を凝らす。なんだ········?

『い、家と、人面蜘蛛か········?』

そう。ぶら下がった家と、
そこに糸で吊るされたたくさんの、
人のような、者たち。

そして、その家から垂れ下がった一本の糸に、
大きな大きな、人面蜘蛛がぶら下がっている。

なんなのだろう。

本当に、なんなのだろう。

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