もう届かない。 ページ47
「あ、ちょうど今ニュースやってんぜ」
不良君がおもむろに握っていた携帯から目を離し、顔をあげる。
ちなみに彼の名前は知らない。
言っておくけど龍志の配下の不良って数すごく多いからね。
時々増えてたり減ってたりこなかったりなんて日常茶飯事だから、全員紹介すると途中で読者いなくなるよ絶対。
不良君は小さい部屋の隅っこにぽつんと置いてあったおんぼろのテレビのもとへ歩み寄る。
そしてスイッチを押してテレビを点けた。
まだ使えるんだそのテレビ。
『――間が経ち、未だに遺体は行方知れずです。』
「!」
体が未だに痛むのも忘れて、私は画面を食い入るように見つめた。
砂あらしがひどいが、今流れているニュースは確かに私の事件についてだ。
『いじめについては、学校側は――』
「なんだ、まだ話まとまってねーのか。」
「結構しばらくずっと黙秘状態っすよね。学校前、マスコミの数すげーっすよ。」
「一躍有名校になれたんじゃねーの。」
けらけら、と龍志を含む不良たちが笑い出す。
それでも私は画面を穴をあけようとしているように見つめていた。
『坂月Aさん16歳の保護者である坂月――』
「ッ!!」
母の名前が聞こえて、私はベッドから飛び上がる。
ベッドが軋み悲鳴を上げ、掛け布団がずるりと床に落ちていく。
それを雄人君がぎりぎりキャッチした。
『――たちが気づけなかったんです。あの子は溜め込む子だって知ってた――...私たちの責任です。』
涙目で、それでいて力強い声。
ハンカチを片手に、たくさんのマイクを向けられ、それでも戸惑いを見せない強い瞳。
あぁ、お母さん...
ごめんなさいなんて言っても、もう届かないね。
もう画面を見てられなくて、俯いた。
さらりと垂れる髪の毛を見つめながら、俯いたままつむじの前で両手を組んだ。
ざざざ、と砂あらしがお母さんの声をかき消していく。アナウンサーの声をかき消していく。
逃げたい。
テレビを消してほしい。
でも逃げたくない。
もう少しだけ、お母さんの声を聞いていたい。
これが最後になるかもしれないなんて考えたくない。
お母さんは私の遺書を読んでくれたかな?
私の願い、叶えてくれるかな?
私がいなくなったことで余った時間やお金、好きに使ってくれるかな?
...無理だろうな。
だってあの人だもん。
自分よりも真っ先に子供を優先するような人だったもん。
「...ごめん...なさ...」
誰にも聞こえないように、掠れた声でつぶやく。
もう届かない。
「やってみな。私のお母さんも諦めたよ」→←寝ている間にすべてが終わってしまっていたのか。
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∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - にゃん舞姫さん» 申し訳ございません!今更コメントに気付いてしまい本当申し訳ない限りです。にゃん舞姫様には本当にいい読者様に恵まれたといつも感激しております。本当にありがとうございます。どうか、これからもよろしくお願いします。本当にありがとうございます! (2014年7月1日 0時) (レス) id: ce568da1b2 (このIDを非表示/違反報告)
にゃん舞姫(プロフ) - パンドラダイアリー・一冊目おめでとうございます!!とっても、面白かったです><勿論二冊目も読ませていただきます。楽しい時間をありがとうございました!! (2014年4月29日 15時) (レス) id: 201acc661a (このIDを非表示/違反報告)
うにゃ@FUNASSIIIIIIIIIIII(プロフ) - にゃん舞姫さん» 母さんはおいしいと言って普通に食べてましたがね。まるで別世界に行ったような地獄な感覚でした。 (2014年4月7日 10時) (レス) id: 84b680cc3c (このIDを非表示/違反報告)
にゃん舞姫(プロフ) - 蛙ってwwそれもし食べてたら・・・(p・Д・;)アセアセ、お母さん凄すぎます!! (2014年4月6日 0時) (レス) id: 201acc661a (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ネコミミ∧∧@元うにゃ(プロフ) - にゃん舞姫さん» いつも読んでくれてありがとうございます!作者も偏食です。この前はお母さんに騙されて蛙食わされそうになりましたYO!そういわれると本当に頑張れます、感謝! (2014年4月5日 18時) (レス) id: 5f12e20803 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:うにゃ | 作者ホームページ:
作成日時:2013年11月29日 22時