「…自傷か。」 ページ43
「全身打撲ね。足が骨折してるけど、綺麗に折れてるから綺麗に治るよ。所々肌が裂けてたり、打撲があったりという所もあるけど致命傷には至ってないね。内蔵も綺麗なままだ。飛び降りの衝撃をよくここまで軽減できたね。拍手ものだよ。」
「俺のチームが力を貸したんだ。当然だろ。」
少し動いただけでギシギシときしみだすパイプ椅子に俺は腰掛けた。
目の前の怪しげな髭面のおっさんは、薄汚れた奇妙な液体だらけの白衣を身にまとっている。
その手にはカルテが握られ、傍の壁にはX線によって取られたAの骨の図、いわゆるレントゲン写真が何枚も張られていた。
確かにその他の骨には異常がなさそうだ。
ただその分、足の骨が綺麗に痛々しそうに折れている。
綺麗に折れている分、それははっきりと視認できた。
「いつになれば目覚める?」
「その子次第だね。頭を強打していなければしばらくで起きるはずだよ。」
頭を強打していなければね、ひひひと醜い笑みを零しながら闇医者は俺を見た。
相変わらず嫌な奴だ。
だが、腕は確かだということはチーム内の全員が知っている。
「あと、この傷だけど。」
闇医者がAの腕にある深そうな傷を指差した。
恐らく木々がクッションになった時にでも切れたのだろう。
痛々しそうに、深いところまで切れていた。
なぜかまだ手当がされておらず、持っていかれた部分の肉片から溢れ出ていた血は今や固まって醜い赤黒い色のグミのようになっていた。
「痕が残るよ。こんなにざっくりいっちゃったからね。」
嬉しそうに深い笑みを浮かべる闇医者。
本当に気味が悪い。人の肌に痕が残ることをこんなに嬉しそうに話す野郎がいてたまるか。
「まぁ、結構手首とか肩とか自傷行為をして痕が残っているし、今更一本増えたところで変わらないかな。」
「…自傷行為?」
「見る?」
ぐい、とAの手首を躊躇いもなく俺に見せつける。
確かにそこには、白い肌にうっすらと膨らんだ皮のような痕が、目立つのが一筋、そして細く短いのが真下に一筋。
俺がじっくり見終わる前に、またもや躊躇いもなくAの服を肩までおろした。
夏服だったら、ただ袖を捲るだけで済んだのだろう。
冬服だったから、それだけの理由で脱がせなきゃいけなかったのだということを願いたい。
じゃなきゃここにサツを呼ばなければいけなくなる。
…まぁ、闇医者だしとっくに警察沙汰だけどな。
確かに、肩には薄茶の、先程より酷い痕が幾本も残っていた。
「…自傷か。」
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∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - にゃん舞姫さん» 申し訳ございません!今更コメントに気付いてしまい本当申し訳ない限りです。にゃん舞姫様には本当にいい読者様に恵まれたといつも感激しております。本当にありがとうございます。どうか、これからもよろしくお願いします。本当にありがとうございます! (2014年7月1日 0時) (レス) id: ce568da1b2 (このIDを非表示/違反報告)
にゃん舞姫(プロフ) - パンドラダイアリー・一冊目おめでとうございます!!とっても、面白かったです><勿論二冊目も読ませていただきます。楽しい時間をありがとうございました!! (2014年4月29日 15時) (レス) id: 201acc661a (このIDを非表示/違反報告)
うにゃ@FUNASSIIIIIIIIIIII(プロフ) - にゃん舞姫さん» 母さんはおいしいと言って普通に食べてましたがね。まるで別世界に行ったような地獄な感覚でした。 (2014年4月7日 10時) (レス) id: 84b680cc3c (このIDを非表示/違反報告)
にゃん舞姫(プロフ) - 蛙ってwwそれもし食べてたら・・・(p・Д・;)アセアセ、お母さん凄すぎます!! (2014年4月6日 0時) (レス) id: 201acc661a (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ネコミミ∧∧@元うにゃ(プロフ) - にゃん舞姫さん» いつも読んでくれてありがとうございます!作者も偏食です。この前はお母さんに騙されて蛙食わされそうになりましたYO!そういわれると本当に頑張れます、感謝! (2014年4月5日 18時) (レス) id: 5f12e20803 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:うにゃ | 作者ホームページ:
作成日時:2013年11月29日 22時