【閲覧注意←】パンドラダイアリー。【妄想オリジナル】

「もう、信じるのは疲れたよ――」 ページ39

「離してくれ、クリス。」

覚悟を秘めて、強い語気で言った私を
信じられない、という瞳でクリスが見返す。
その表情も愛おしいなんて、私は本当に末期状態だ。

それでもこいつを許しちゃいけないんだと、心に刻みつける。
忘れるな、こいつが私にしでかしたことを。
忘れるな、こいつが私に告げたことを。

「離せ。」

もう一度、今度は声を荒げて言い放った。
それに合わせて、クリスの瞳が大きく揺れる。
じぃ、とその瞳を見つめた。…吸い込まれそうな黒。
いっそ、吸い込まれてしまえば楽になれるのだろうか。

「…ごめん。…ごめん。何度でも謝るから…頼むから…死ぬなんて言うな…！」

辛そうに寄せられる眉。くしゃりと歪む顔。
甘えてしまいたいと思うのは、もう何度目だろうか。
ぐしゃぐしゃにされたこの心は、それでも醜く目ざとく、愛を求めてしまう。
もうやめてくれ、と懇願したいほどに、期待を止めることができない。

その「ごめん」にも、もう何の意味も含まれていないのに。

期待するなと心に向かって叫んで、それで二度と期待できなくなるなら楽なのに。
期待するから、こんなにも辛いのに。

「…何度、ごめんって言ったか覚えてるか？」
「……え？」

怖い。
こいつと言葉を交わすのが怖い。
いまだに宙づりという事実に更なる恐怖が重なっていく。
今なら、狂える気がする。

「…何度、俺がそのごめんを許してきたか、分かってるか…？」

もういやだよ。
なんで私がこんな思いをしなきゃいけないんだよ。
私があんたらに何をしたっていうんだよ。

それでも期待してしまうこの心は、いったい何なんだよ。
脱帽してしまうほどの、浅はかなこの感情。

「…もう」

言いかけて口を閉ざした。
言葉が続かない。口が震える。
もともと、表現をするのが苦手な私だったけど、
これほど言うのが怖いと思ったことはないと思う。

その時、私の網膜に何かが映った。
私の手元を、ちらちらと赤いライトが走る。
この赤い光には、見覚えがある。
ついさっきだって、私に温かいやさしさを与えてくれた光。
この光の主は…紛れもない、自信を持って言える。

龍志だ。
龍志が私を、励ましてくれる。
ライトが躍るだけで、心の底から勇気が湧いてくる。
そんなもの、どこから湧いて出てきたのかと苦笑してしまう。

…大丈夫。大丈夫なんだ、きっと。
だって龍志なら、私を死なせない。根拠のない自信に後押しされて
私は…

「もう、信じるのは疲れたよ――」

彼の手を、解いた。

まだ怖い。→←甘えちゃだめだ。

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