【閲覧注意←】パンドラダイアリー。【妄想オリジナル】

Side 宇城　龍志 ページ33

Side 宇城 龍志
『俺は俺の進む道を決めるから。もうお前らに振り回されたくないから。』

機械越しの凛とした声に、思わず目を閉じて聞き入ってしまった。

耳につけているイヤホンから流れる物音から人の声
俺はこっそりAの体の盗聴器を付けておいた。
そこから聞こえる音声ははっきりとしていて、まるで機械越しじゃない感覚に陥る。流石高性能盗聴器。

「龍志さん！まだ合図出さねぇんですか？」
「うるせぇテメェらの声で聞こえねェだろうが。」

すみません！！と謝られるとさらに聞こえにくくなる。
もっとも今は全員沈黙しているようで、耳を澄ましても何も聞こえないが。

正直言うと、先ほどからAが何を言っているのかがよく理解できない。
だが、辛そうな現状だけはよく理解している。

俺は現在自分の位置から周りを見回した。
もう準備は嫌というほど整っている。
死にたくても死ねないほどの重装備に加え、木々がクッションにもなってくれるだろう。
チームの中で一番頭いいやつが、物理的に計算しても無事だと言い切れるレベルの準備だ。

正直一日二日で用意できるものではなかったが、チームがなぜかやる気をだし、一丸となって実現させた。

そして今に至る。

周りには、木々に寄りかかりながらだべっていたり、眠りかけていたり、むしろ眠りこけている奴もいる。
携帯やトランプをしだしている連中も少なくはなくて、誰もが暇そうだった。

そう、準備は既に整っていた。
だが合図である赤いライトを出さないのには理由がある。

最後だから、心行くまで話をさせたいからだ。
虐めたやつらに、何がいけなかったのかを徹底させるつもりだ。

「にしても、俺らがこんなことするなんて…なんか科学の実験見たいッスよね！」

チームの下っ端である笹塚 雄人がにこにことした笑みで言い放つ。
そうだな、と頷けば、雄人は再び興味深そうに装備を見に行った。
時折つついたりしていて、他の奴らにどやされる。

正直、いじめられてようが半殺しにされてようが、俺らには関係ない話だ。
こんな馬鹿げた復讐に参加しているなんて、阿呆らしい。

それでも俺がこの復讐劇に参加した理由が二つある。
一つは当初の目的だった、雄人の命を救った恩返し。もっとも、喧嘩を売ったAも悪いが、一番悪いのは確認しなかった雄人だ。

二つ目は、かつての仲間をどん底に突き落とすことに戸惑いを感じずにいたあいつの心に、興味があった。
あの冷めた瞳には、何が映るんだろうか。

"俺の存在"→←私に勇気なんてなかったから。

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す