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「やだ龍志ったらプレイボーイ。」 ページ14

体全身で風を感じた。
その風から逃れるように、すぐ目の前にある大きな背中に精一杯抱き着いた。
少しだけ動揺する気配を、感触が伝えてくる。
声も聞こえた気がするけど、いかんせん風を切る音とヘルメットで何も聞こえない。

ヴオォオ…と、擬音するならこんな感じの音。
地響きのように低く、それでいて芯の強い音。
耳じゃなく、心まで振動させて来る、そんな音。

…が、とてつもなく嫌いだ。

というか好きだ嫌いだの問題ではない。
この音が怖い。

私の家がある場所も、毎晩真夜中になるとこんなバイクの音が鳴り響くけど、そのたびに恐怖を感じる。
ネットで調べてみたが、どれも「暴走族を連想するから怖いのでは?」とありきたりな答えしかなかった。
だが私は暴走族など見たこともないから怖くもない。
そのうえ、怖いのはバイクの音だけじゃなく、工事の音も、だ。
掃除機の音でさえ時折恐怖を感じる。

心臓が早鐘を打ち、まるで何かが襲ってくるような感覚に陥るのだ。
耳をふさぎたい。でも塞いでも意味がない。
そんな音が体の中を掻きまわすように振動するのが、幼い頃から嫌いだった。

いわゆる、低音(機械的な)恐怖症だ。
勿論検索してもそんな恐怖症は見当たらなかったが。

ずっと目を瞑ってたので、ようやく目を開けた時にはあたりの光が目に痛かった。
止まったことを知らせる振動に目を開け、昨日見たばかりの風景に目を細めた。

相変わらず、ここの店長はセンスがいい。
私なら想像することはできても、実際デザインするとなると絶対頭が真っ白になるからなぁ。

「よう、龍志。Aちゃんも連れてきたのか?」
「あ、マスター!」

マスターの白木さんは、私を見ると人懐こい笑みを浮かべた。
右手を頭の横にあて、小さく挨拶もしてくれる。

店内には既にちらほらと客がいて、バイクで来た集団にも慣れているようだった。
そういえば聞いた話、ここは龍志たちのたまり場だったらしい。

「おいA。」

今となっては聞き慣れた心地いい低音に、私は首をかしげつつ振り返った。
私がバイクをふらふらと降りると同時にメットを外してくれた張本人が、自分のメットを外しながらそこに立っていた。

「お前、抱きしめてくれるのは嬉しいが締め付けすぎだ。」
「やだ龍志ったらプレイボーイ。」

だってそうですもん、とまさか肯定した龍志をスルーして私は店内へ入って行った。
可愛らしい鐘の音が響き、木の匂いが私を包んだ。

…あー、やっぱこの空間が好きだ。

「知らない。私は塩派。」→←「まぁ結果オーライってことで」



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作品ジャンル:ラブコメ, オリジナル作品
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∧∧ネコミミ∧∧@玉ねぎ@オニマス(プロフ) - にゃん舞姫さん» 申し訳ございません!今更コメントに気付いてしまい本当申し訳ない限りです。にゃん舞姫様には本当にいい読者様に恵まれたといつも感激しております。本当にありがとうございます。どうか、これからもよろしくお願いします。本当にありがとうございます! (2014年7月1日 0時) (レス) id: ce568da1b2 (このIDを非表示/違反報告)
にゃん舞姫(プロフ) - パンドラダイアリー・一冊目おめでとうございます!!とっても、面白かったです><勿論二冊目も読ませていただきます。楽しい時間をありがとうございました!! (2014年4月29日 15時) (レス) id: 201acc661a (このIDを非表示/違反報告)
うにゃ@FUNASSIIIIIIIIIIII(プロフ) - にゃん舞姫さん» 母さんはおいしいと言って普通に食べてましたがね。まるで別世界に行ったような地獄な感覚でした。 (2014年4月7日 10時) (レス) id: 84b680cc3c (このIDを非表示/違反報告)
にゃん舞姫(プロフ) - 蛙ってwwそれもし食べてたら・・・(p・Д・;)アセアセ、お母さん凄すぎます!! (2014年4月6日 0時) (レス) id: 201acc661a (このIDを非表示/違反報告)
∧∧ネコミミ∧∧@元うにゃ(プロフ) - にゃん舞姫さん» いつも読んでくれてありがとうございます!作者も偏食です。この前はお母さんに騙されて蛙食わされそうになりましたYO!そういわれると本当に頑張れます、感謝! (2014年4月5日 18時) (レス) id: 5f12e20803 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:うにゃ | 作者ホームページ:   
作成日時:2013年11月29日 22時

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