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3.5-1夜の帳が下ろされる。そこには独りぼっちのうさぎさん。 ページ10

「わあ……満月ですよ。ウサギが餅をついていますね」

「うん。かわいい」

「ああやってうさぎが見えるのは、日本だけらしいです」

お母さんが言ってました、とAは目の前の少女に向かって笑顔で言った。

それは今時珍しい着物を着て、長く艶やかな髪をおさげにしている少女だ。その瞳は月に向いている。

「そうなんだ。知らなかった。けど、なんだかさみしい」

「……そう、ですね。あっ、泉ちゃんはウサギが好きなのですよね。他に好きなものはありますか?」

「好きなものは湯豆腐」

「私も(じゃがいも好き)です。美味しいですよね」

太宰らとは別れ、Aは泉鏡花と会っていた。
ちなみに、太宰たちにはAがいつの間にか消えたと思われている。

鏡花とは中也を通して知り合い、好きなものが共通していることから、なんやかんや仲良くなったのである。

「Aはどんな豆腐が好き?」

「私は熱々(蒸かし芋)が好きですね」

「私も一緒。熱ければ熱いほどいい」

「わかります」

なんやかんや、好きなものが一致したのである。

「(じゃがいもの)どこが好きですか?」

「白いところ」

「わかります。綺麗ですよね。しかも口に入れるとほろほろ崩れちゃって、かわいい」

「うん」

なお、おかしいのはAだけである。

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作者名:萩原三月 | 作成日時:2018年8月15日 17時

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