3.5-2 ページ11
太宰治視点
やぁ、私だ。
私の心中相手こと村雨Aちゃんの話をしようと思う。
ある日、私は彼女と好物の話をしていたんだ。武装探偵社でね。ああ、国木田君なら外に出ているよ。
「私は味の素と蟹が好きなんだ」
「私もです。美味しいですよね……じゃがいも」
「え?」
「へ?」
なぜじゃがいもの話を?と思ったら、Aちゃんが急にあたふたした。
むーと顔を歪めている。
「どうしたんだい?」
「私、今、じゃがいもって言いました?」
「言ったよ。じゃがいもが好きなんだね、君」
「あ、まぁ……そうなんですけど」
なんで急にじゃがいもが好きだと言ったのだろう。
すると後ろから、糸目の青年がひょっこりと顔を出した。
「Aは蟹が嫌いなんだろ?だから自己暗示して蟹をじゃがいもにすり替えた」
「えっ?そうなのかい?」
嫌い、自己暗示、すり替え。
ちょっとズレたところがあるAからは想像できない言葉だ。
自分に暗示をしてまで嫌いなものを好きというのは少し異常じゃないだろうか。
……ああ、だから彼女はこのことを知られて戸惑ったのか。
Aちゃんにそんな常識人的な発想があるなんてビックリだよ。
「あー……まぁ、おばあちゃんが言ってたんです」
簡単に言えば人付き合いの為といいますか、争いをおこさないためです、とAちゃんは言った。
「万人を受け入れるためには、どうしても嘘をつかなければならない。
しかし、嘘はいけないものだ。嘘をつかず、全てを好きになる方法。
それは自己暗示以外にはない。いや、他にもあるのかもしれない。けれど私は自己暗示しか知らない。だから、そうするしかない。
____ これがおばあちゃんのお言葉です」
「へえ……不思議なおばあ様だねえ。しかし、Aちゃんはそれに文句も言わず従ったのかい?」
「まぁ……」
歯切れ悪く、Aちゃんは自分の家のことを話した。
3.5-3→←3.5-1夜の帳が下ろされる。そこには独りぼっちのうさぎさん。
2人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:萩原三月 | 作成日時:2018年8月15日 17時