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六十三 ページ13

陸奥にAはそのまま着いていき、港に辿り着く。
間もなく離陸するようで、船員は世話しなく動いていた。



「じゃあ。わしもそろそろ船に戻る。送ってくれてありがとうな」



「気をつけてね」



背を向ける陸奥に手を振る。
艦内に入っていく陸奥の姿を見届け、帰ろうとした時、




「おい。坂本、もう行くぞ」




「わかっちょる。すぐ終わらせるぜよ」



背の高い男が、陸奥とすれ違うようにして出てきた。



「わざわざ見送りか、優しいのう」



楽しそうにへらへらと笑いながら、坂本は歩いてきた。

Aの前に来ると、ぴたりと足を止める。
見上げるようにして坂本を見れば、坂本は歯を見せて笑った。



「行く前に会いにきてくれるとは思わんかったぜよ」



「…お姉ちゃんを見送りたくて」



「ほおん。わしはなしかいのう」



そう言って、坂本はわざとらしく残念そうな顔をする。
坂本はAの首元にふわりと触れる。




「やっぱり、似合っちゅうの」




優しげな笑みを、Aに向ける。




「私、ずっと大切にしますね」




「ずっと、ねえ」



坂本はAの首元から頬に、手をずらしていく。
突然触れられた手に、Aはぴくりと動いた。




「…A。また帰ってくるきの。その時に」




「坂本。そろそろ出発するぜよ」




こほん、と咳払いして、気まずそうに陸奥は坂本を呼んだ。
陸奥の声に答え、坂本は背中を向けた。





(…待って)





坂本が踏み出す足と同時に、Aは坂本の背中に手を伸ばす。




「A…!」




陸奥は思わず声を上げ、その声に、坂本は振り向いた。






「坂本さん…!」





Aは坂本に飛びかかり、襟元をぐいと引き寄せる。



坂本の青色の瞳は揺れ、真っ直ぐにAをとらえていて。







「急にどうし」









Aは頭ひとつ分ある高さの男の唇に、自分の唇を重ねた。






一瞬時が止まったようだった。





坂本も、陸奥も、船員もしんと静まり、波音だけがその場に響いた。




とんとAの着地する音。




坂本は状況も分からず、立ち尽くしていた。









「好きでした。いってらっしゃい」








そう言い、Aは足早にその場を去った。


.



.


.



「……」




「…坂本。こりゃ一本とられたの」




「…のう、陸奥ぅ。おまんの妹はなかなか一筋縄じゃいかんぜよ」




「流石、わしの妹じゃあ」




坂本と陸奥は、また広い宇宙へと舵をとった。


.

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Nattu(プロフ) - connyさん» 返事遅くなって申し訳ございません。コメントありがとうございます!connyさんのご期待に添えるよう、楽しみながら書きたいと思います* (2021年2月20日 1時) (レス) id: 8022db4695 (このIDを非表示/違反報告)
conny(プロフ) - 応援してます!続き楽しみです! (2021年2月11日 0時) (レス) id: 712cd20bd6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Nattu | 作成日時:2021年2月10日 14時

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