王子様のお姫様【まふまふ】

37.信じて ページ37

『…………ｯ!』

「………A？」




その声が、やけに低く聞こえた。
そして気づけば、頬には冷たい涙が溢れ落ちている。

私、泣いてる？


そうだ。大嫌いって、言っちゃったから。
あのとき、閉じ込められたとき、きちんと彼の言葉を聞けばよかった。

大丈夫だよって、言ってあげればよかった。
私のせいだ。
私が、私が……。





「なんで泣くの？僕がそんなに嫌い？」


肩をつかまれて、鋭い目線を食らう。



『…………うぅっ、ちがっ……』

「なにが嫌なの？僕がこんなにもしてるのに、何が嫌なの？」



真冬くんの冷たい言葉が突き刺さる。
泣いても、何もできないのに。
泣きたくてたまらない。




「どうして？なんで？なんで？」



「なんで泣くの……？」





『まふ…ゆくん、がっ……………き、だっ……から』




伝えなきゃ。
言葉に紡がなきゃ。
きっと、理解してもらえない。





『真冬くん、が、好き、だから……！こんなこと、してほしくない……！』



真冬くんの光のなかった瞳が、一瞬だけ見開いて、そして、輝いた気がする。









「…………別に、そんな嘘、いいよ。僕をたぶらかしたいの？」

『ちがっ！ちがう！』

「君が、君自身が、僕のこと嫌いっていったんだ」

『そ、それはっ……！』



確かに、いってしまった。
心にもない言葉を、彼にいってしまった。




「いいんだ。別に、僕は君といたいから、一緒にいればいい。ただ、それだけ」


私の涙を服の裾で拭い、まるで暗示するように彼は話す。
一緒にいればいい。それだけ、って、本当にそれだけ？

貴方は、自分が愛すだけ愛して、
愛してほしいとは思わないの？
好きだって、一緒にいたいって、言われたくないの？


『それだけなんて、言わないで……！私が、真冬くんに好きっていったら駄目なの！？どうして、信じてくれないの！？信じるって…いってた癖に！』









「…………じゃあ、なんなんだよ」




どす黒く、低い声が静寂を破った。
その小さな言葉は、案外簡単に私の耳にはいる。

瞳を鋭くして、私を見つめている。





「そっちだって、大嫌いって、俺に言ったくせに！じゃあ俺はどっちを信じればいい訳！？都合のいいときだけ好きって言うのも、バレバレなんだよ！」

『都合のいいときじゃない！！本当に好き！！好きなの！！こっちを信じてよ！！！』

「……信じさせてくれなかったのは、あんたの方だろ！？」





________え？

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