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『うまぁっ〜!』
「ふっ、そうでしょうそうでしょう!」
『なんでお前が言うんだよ』
「お前じゃない!神様!」
屋台に売っていたお肉にがぶりと噛み付くと、咀嚼する度肉汁がじゅわりと口に広がる。
その美味しさに頬が落ちそうなほど感激を受けていると、神は調子にのってすぐに笑う。
『……はあ、美味しかった』
「ば、ばけもん……」
『なんかいったか?』
「な、なんでもないよ……」
米俵の四文の一もあったお肉をペロリと平らげた私に、彼は青ざめる。
お肉は別バラ別バラ。
「……さて、次は何を食べる?」
『んー、少し喉がかわいたかも』
「わかった。じゃあ飲み物を買いにいこうか」
さっ、と立ち上がり、次の売店まで移動する。
やはり恋人繋ぎをしているのと、この格好なので少し目立つことはあったが、気にしないでいると楽しさだけが残る。
何より、久しぶりの外なのだ。
「何がいいかしら?」
「これ!これほしい!」
「あははっ、良いだろう、買ってあげるぞ」
「ちょっ、あなたっ!そうやって甘やかすからぁ」
「大丈夫だ、なんも問題はありゃしねぇさ」
手を繋ぎながら歩く獣人であろう親子達。
その仲よさげな状況に、私はどう反応すればいいのだろうか。
____「A、いい!女は度胸!当たって砕けるのよ!」
____「いや砕けたらだめだろ!」
____「はぁ!?大体あなたはいつもいつもそんなこと言って!私はあなたに告白するとき度胸しかなかったんだからね!」
____「俺だってお前に求婚するとき度胸しかなかったよ!でも砕けたらおしまいってことだろ!そんなの考えたくねぇよ!」
____「あぁ!そういうとこ愛してる!」
____「はあ!?俺だって愛してるし!」
私の母と父は、あれ以上に毎日喧嘩をしていたっけ。
でも二人とも喧嘩をしているのに笑っていて、そんな光景が、私は大好きだった。
ぎゅっ、といつのまにか彼の手を握る力を強めていたようだ。
「A……?」
その言葉に、ハッとする。気づけば神は、心配げにわたしをみているではないか。
弁明しないと、気にすんなって……。
『な、なんでもっ……』
「そらるさああぁん!!」
何処からか焦りに満ちた声が聞こえる。
そして、影がこちらのほうへ向かって突進してきた。
おいおい、そらるって誰だか知らないけど人の名前を大きな声で……。
「…うわっ、来やがった」
え?
彼の目線は、影の方だった。
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ちょこ - とてもよかったです!その後話がもっと欲しい! (2021年9月26日 13時) (レス) @page42 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
しろむ(プロフ) - 2ヶ月ほど占ツクを離れていたら、完結していてビックリです!うぐいすあんさんの作品大好きです。今回も素晴らしい小説ありがとうございます (2020年1月31日 21時) (レス) id: 3eaa2e0c73 (このIDを非表示/違反報告)
鶯餡(プロフ) - すばるさん» 私もすばるさん好きです〜!そらるさんの可愛さを最大限引き出せましたかね!?こちらこそ読んでいただきありがとうございました! (2019年12月19日 13時) (レス) id: 6bb0fe0dd0 (このIDを非表示/違反報告)
鶯餡(プロフ) - 雨月冷さん» いつもありがとうございます!優勝できましたイエーイ()今回はほんわか系を書いていたのでどうしても過去編がシリアスになってしまいました……。はい!楽しみにしていてくださいね!ご満足できるような作品を作れるよう頑張ります! (2019年12月19日 13時) (レス) id: 6bb0fe0dd0 (このIDを非表示/違反報告)
鶯餡(プロフ) - らfkー(らふきー)さん» ありがとうございまrrrrrrrrrrrrrrrrrrす!過去編はかなぁり凝っているので、泣いていただくほどのお話ができてとても光栄です! (2019年12月19日 13時) (レス) id: 6bb0fe0dd0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鶯餡 | 作成日時:2019年11月10日 22時