番外編:「ほんとの名前」 ページ31
ちなみに神様の血でもとの世界に変えることはできません。
神様の血はいいお値段で売れるんですよ。ね。(∩゚д゚)
__________
『そらる、大根持ってきて』
「はーい」
『そらる、お茶碗とって』
「……はーい」
『そらる、醤油とって』
「……うん」
いただきます。
そういい終えたあと、箸に手をつけてご飯をいただく。
うん。美味しい。
咀嚼しながらそう感じていると、ふと固まったままのそらるがいる。
いつもならにこにこと笑ってご飯を食べるのに。
『そらる?』
名前を呼ぶと、ピクリと肩を震わせる。
何かやましいことでもあるのかよ。じーっと彼を見つめても、彼は俯いたままだ。
どうしたんだろう。
すぐに打ち明けてくれないそらるに少し腹が立ってきた。
『そらる、なに?何かあるの?』
強めにいってみても、そらるはなにも言わない。なんなんだ。
むかむかと苛立ちが沸き上がってくる。
『そらっ』
「………………ねえ」
もう一度大きな声でそらる!と叫ぼうとしたら、そらるの声に遮られた。なんなんだ今度は!
ぷんぷんと頬を膨らませながらいると、彼は続きを紡ぎだした。
「ほんとの名前で呼んでほしい」
潤んだ瞳。
白い頬にはぽおっと紅が広がっている。
まるで恋人にねだるような言い方。
_______「その、神の本名は
『番しかいっちゃダメなんじゃ……』
「Aはもう俺の番だよ。それに結ばれたし」
『なっ!……』
運命が決めた妻……だっけ?そらるの番が私ってこと!?
先ほどまで苛立った気持ちはどんどんと羞恥心に塗られていく。
「番って言うのは、本能的にわかって、Aが俺の番ってことはもう知ってたんだよね」
『え、えぇっ!?……』
「だから、名前で呼んで」
そんなこと言われても……。
『な、名前なんてしらな……』
「Aはしってる」
そらるの青い瞳は、私をとらえる。
いや、知らないし!
名前を言われたこともないし!
じっ、とそらるに見つめられる。
恥ずかしいのに。
いつだってそうだ。
そらるの、私に向ける目はまるで見透かすような瞳。
空のように広く、青く、見つめるだけで溺れていきそうな瞳。その広大さはきっと空よりもあるのかもしれない。そう、遥か遠い彼方まで見回せるような……。
『か、なた…………?』
そらるは、満面の笑みを浮かべた。
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ちょこ - とてもよかったです!その後話がもっと欲しい! (2021年9月26日 13時) (レス) @page42 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
しろむ(プロフ) - 2ヶ月ほど占ツクを離れていたら、完結していてビックリです!うぐいすあんさんの作品大好きです。今回も素晴らしい小説ありがとうございます (2020年1月31日 21時) (レス) id: 3eaa2e0c73 (このIDを非表示/違反報告)
鶯餡(プロフ) - すばるさん» 私もすばるさん好きです〜!そらるさんの可愛さを最大限引き出せましたかね!?こちらこそ読んでいただきありがとうございました! (2019年12月19日 13時) (レス) id: 6bb0fe0dd0 (このIDを非表示/違反報告)
鶯餡(プロフ) - 雨月冷さん» いつもありがとうございます!優勝できましたイエーイ()今回はほんわか系を書いていたのでどうしても過去編がシリアスになってしまいました……。はい!楽しみにしていてくださいね!ご満足できるような作品を作れるよう頑張ります! (2019年12月19日 13時) (レス) id: 6bb0fe0dd0 (このIDを非表示/違反報告)
鶯餡(プロフ) - らfkー(らふきー)さん» ありがとうございまrrrrrrrrrrrrrrrrrrす!過去編はかなぁり凝っているので、泣いていただくほどのお話ができてとても光栄です! (2019年12月19日 13時) (レス) id: 6bb0fe0dd0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鶯餡 | 作成日時:2019年11月10日 22時