2 ページ2
「……え？」
神は混乱の声をあげる。
ここは神のみぞ入れる境地。
そんな地に流れる清らかな川。
そこに流れてきた……。
「な、なんで女の子がいるの？」
真っ白な着物を装おい、ぐったりと眠っていた濡れた少女だった。
*************
『…………ん、』
パチリ、と目が開く。
目を開けたそこには見慣れた天井はなく、ずきずきと痛む体をおさえ、なんとか上半身を起こす。
『…………こ、ここは？……』
見慣れない座敷の部屋。
襖に囲まれており、その中に私が先程寝ていたであろう布団がひとつ。
おかしい。ここはどこなのか。
私はたしか、生け贄として海に沈んだはず……。
そんな瞬間、パサッ、と襖が開いた。
「…………あ、起きた？」
『だ、だれッ！』
急に出てきた人物に私は驚く。
そして、身構えた。
だっておかしい。
私は海に飛び込んだはずなのに、こんな空間にいるわけない。人と出会うわけない。おかしい……！
「警戒しなくていいよ。なんにも君を襲ったりはしないから」
クスクスと微笑み、私のもとに近づく。そして、手元に持っていた水桶を置き、浸していた布を取り出す。
ぎゅっ、と絞ったのち、私に手渡した。
真っ白な肌で、大きな手のひらだった。
「はい、これで体拭いてね。女の子ってそういうの気にするんでしょ？」
『ど、毒とか……』
「入ってないよ。てかなんで入れるんだよ」
『だ、だって……』
「はいはい、いいから拭いて。あ、俺に拭いてほしい？」
『変態ッ！！』
私は自分の体を抱きしてるように腕を組み、彼をきっと睨み付けた。
うそうそ、なんて微笑む彼は、なんだか得体が知れなくて怖い。
でも一応嫌なので、顔や首もと、手首などを拭いておく。あわよくば脇とかも吹きたいのだが……。
『な、なんで、……おかしい！』
「え、どうしたの？」
ふざけんじゃねえ。
どうして。どうして。
『どうして私こんな服に！……』
生け贄用の白い着物ではなく、水色をベースにして白い模様がまばらにちりばめられている高価な着物。
こんな服持ってるわけないし、第一着替えた覚えも……。
『……まさか、』
じっ、と彼を見る。
彼はビクッ、と肩をはねらせ、目線をそらした。
「あ、あははぁ……ダ、ダイジョウブ、ミテネエカラ……」
『変態男ぉぉぉぉぉ！！！』
この部屋のなかに、私の雄叫びだけが響き渡った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 233人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちょこ - とてもよかったです！その後話がもっと欲しい！ (2021年9月26日 13時) (
レス) @page42 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
しろむ(プロフ) - ２ヶ月ほど占ツクを離れていたら、完結していてビックリです！うぐいすあんさんの作品大好きです。今回も素晴らしい小説ありがとうございます (2020年1月31日 21時) (レス) id: 3eaa2e0c73 (このIDを非表示/違反報告)
鶯餡(プロフ) - すばるさん» 私もすばるさん好きです〜！そらるさんの可愛さを最大限引き出せましたかね！？こちらこそ読んでいただきありがとうございました！ (2019年12月19日 13時) (レス) id: 6bb0fe0dd0 (このIDを非表示/違反報告)
鶯餡(プロフ) - 雨月冷さん» いつもありがとうございます！優勝できましたイエーイ()今回はほんわか系を書いていたのでどうしても過去編がシリアスになってしまいました……。はい！楽しみにしていてくださいね！ご満足できるような作品を作れるよう頑張ります！ (2019年12月19日 13時) (レス) id: 6bb0fe0dd0 (このIDを非表示/違反報告)
鶯餡(プロフ) - らfkー(らふきー)さん» ありがとうございまrrrrrrrrrrrrrrrrrrす！過去編はかなぁり凝っているので、泣いていただくほどのお話ができてとても光栄です！ (2019年12月19日 13時) (レス) id: 6bb0fe0dd0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：鶯餡 | 作成日時：2019年11月10日 22時
