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大きな音をならし、引き戸のドアは奥に倒れていく。
そして私は、床に叩きつけられたドアの上に立っていた。
『________え?』
その事に気づいたのは、数秒後。
先程まで流していた涙は、既に止まっていた。
え?私体育倉庫のドアを倒したの?え?え?
そんな力いつの間に???え??
も、もしもこの事が先生たちにバレたら……。
想像すると、血の気が引き、肌が粟立つのがわかる。
「馬鹿力」
『うるさいっ!!』
「怪力」
『ちょっとだまれよお前!!』
先程から後ろで文句を吐いてくる相川が本当にうるさい。
私はこの倒れてしまったドアをどうするかで頭が精一杯なのに……。
「何突っ立ってるの?帰らないの?」
『いや、ドアをなんとか……!』
「無理でしょ、ここは知らないふりしてた方がいいよ」
『そんな見て見ぬふりみたいな……』
いつの間にか私の前を通りすぎた彼は、背を向けながら問い掛けた。
しかし後々の展開に怯えた私は、その場に立ち尽くしかなかったのだ。
今日は散々すぎる。
相川と体育倉庫に閉じ込められ、
ファーストキスを相川に奪われ、
体育倉庫のドアを蹴り度してしまった。
足下を見た。
すぐ近くには私の倒したドア。
このまま逃げてしまえば、お母さんや先生に怒られる未来が見える。
「臆病者」
『……はっ、』
低く、重たい声に顔をあげる。
眼前には、私を鋭く睨む相川がいた。
「あれだけ出たいって言っておきながら、出たら出たで怯えるんだ」
『はっ!?だ、だって……!!』
「だってもなにもない。意味わかんない。なら一生僕と体育倉庫に閉じ込められてた方がよかった?」
『そ、それはっ……!』
図星をつかれ、言う言葉もなくなる。
俯いて沈黙を続ける私に、相川は言葉を続けた。
「結局は自分のことなんだね」
その言葉に、私は胸を打たれた。
自分のこと?何が?私が?
いや、そんなことない。
だって、だっていつだって。
いつだって私は、誰かの役に立とうって、今日体育倉庫に行ったのだって先生のためだ。
今日ボールをきちんと棚にのせようとしたのも、ボールを使う人のためだ。
____どうして私は怒られてるの?
良いことしてきたはずなのに……。
「……ふ、っ、……ふふっ、あははっ!」
その瞬間、乾いた笑い声が体育館に木霊した。
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ちょこ - とてもよかったです!その後話がもっと欲しい! (2021年3月14日 1時) (レス) id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
鶯餡(プロフ) - リート@暫く浮上しません。さん» 返信が遅れてしまい申し訳ございません……!!ありがとうございます!そういっていただけてとても嬉しく思います!はい!だらだらします!()コメントありがとうございます! (2019年11月9日 21時) (レス) id: 6bb0fe0dd0 (このIDを非表示/違反報告)
リート@暫く浮上しません。(プロフ) - 完結おめでとうございます。最初から最後まで二回も見るくらい、面白い作品でした。羨ましい。ゆっくり休んで疲れを癒してくださいね。改めまして、完結おめでとうございます。 (2019年10月4日 7時) (レス) id: 5e7567a452 (このIDを非表示/違反報告)
鶯餡(プロフ) - 雨月冷さん» こちらこそいつもみていただきありがとうございます!!このお話、結構ストーリー凝っていたのでそういっていただけると頑張った甲斐があります!はい!是非楽しみにしていてくださいね!頑張ります! (2019年10月3日 23時) (レス) id: 6bb0fe0dd0 (このIDを非表示/違反報告)
鶯餡(プロフ) - 絆さん» こちらこそいつもありがとうございます!!あ、その心配はありませんよ!私、めちゃめちゃずぼらですので!!( ・`д・´)ご心配していただけて誠に嬉しく思います!ありがとうございます!!!! (2019年10月3日 23時) (レス) id: 6bb0fe0dd0 (このIDを非表示/違反報告)
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