37 ページ37
「___ま、ここは屋上だし？お前らは逃げられない。だから、大人しく俺のAを渡してくんね？」
「__はいそうですか渡します。っていうやつは少なからずこの状況にはいないと思うけど」
彼方は私を守るかのように手を広げ、細い腕を私の前にさらけ出す。
今は緊急事態なのに、少し嬉しいと思ってしまった。
「なに？おまえもAのこと好きなの？」
「___少なくとも、その答えはお前に言う意味がない」
「はっ、答えになってねぇし」
彼は鼻で笑い出す。
そして、不意にポケットに手をいれ、懐から折り畳み式のナイフを取り出した。
そのナイフは、脅すと言わんばかりに光にあたり、閃々と光っている。
「___まぁいいや。なら武力を使うまでだしな」
「_____」
目の前の彼方は黙る。
どんな顔をしているのかよくわからなかったなめ、更なる不安が私を襲う。
『___もう、もういいから！彼方は逃げて！』
私が目一杯叫んだときだった。
彼はゆっくりと顔を振り向かせ、私の方へと視線を変える。
___その顔は、美しくて。
サラサラと真っ黒な黒髪が左から右へと泳ぐ。
彼の小さな唇は端をあげていて、彼の垂れた目は細く笑っていた。
「___大丈夫。俺はAを見捨てたりしないから」
____その優しい声が響いてからは、一瞬の出来事だった。
彼方は私を肩で背負って、屋上のフェンスへ体を乗り出す。
『え？え？か、かなた！？』
混乱してばかりの私と、
「____は？」
唖然としている悠木。
彼方はいったい、何を___？
「__でも、あんまり暴力沙汰には関わりたくないんでね。平和に余生を過ごしたい。
___だから……」
彼は足から、フェンスへ体を落としていく。
そして、彼の下半身がフェンスから落ちたとき、彼と私は重力に引っ張られた。
__そう、私と彼方は今、飛び降りたのだ。
『きゃああああああ！！』
「___ふっ、見て？あいつの間抜け顔。ポカーンってしてる」
私はちらっと上を見てみると、彼はフェンスに手をつけて唖然とした表情をつづけていた。
____ってか！違う違う！！
このマンション結構高いし！！死ぬやんけぇぇぇぇぇ！！！！！
「___大丈夫だって。命は助かるから」
『____へ？』
不意に、私の腰に彼方の白くて大きな手が回される。
彼方の細くて白い首もとが目の前にあって、鼻をくすぐる匂いを感じる。
そして、私と彼方は頭から急降下していった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 271人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちょこ - とてもよかったです！その後話がもっと欲しい！ (2020年1月7日 18時) (
レス) id: 1b1d47c664 (このIDを非表示/違反報告)
優華 - めちゃくちゃ面白いです！ (2019年10月23日 17時) (レス) id: ee8e84d10b (このIDを非表示/違反報告)
Rmd(プロフ) - あああああ飛んできたらこっちも尊かったです。目から涙出てきました…(;_;)とても面白かったです！！また他の作品も読ませていただきます！ (2019年8月26日 17時) (レス) id: 4a935f5230 (このIDを非表示/違反報告)
夜空(主にDS)(プロフ) - って一人で混乱してたわw過去最高(多分)の長文コメでごめんね！無理だけはしないでね！遅れたけど、本当にお疲れ様。頑張ったね！ (2019年8月24日 13時) (レス) id: 1e511e327c (このIDを非表示/違反報告)
夜空(主にDS)(プロフ) - つつ、小説を読み続けると夢主が大好きって言ってないって言ったときにそらるさんが起きてくれていい意味で胸がギュッとなってめっちゃめっちゃ良かった(o^^o)番外編も嫉妬してると思うと可愛くて、久々にニヤニヤした気がするw嫉妬�△蓮△笋个�w二人ともいるんじゃ？ (2019年8月24日 13時) (レス) id: 1e511e327c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
