方舟に乗って。 (ページ4)

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戦略ページ4

インフルった
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「で」
「また捕まっちゃった～っ！！」
「勝てないなぁ…」

大きく息を吐き出しながら芝生の上に倒れ込むエマを見ながら、木陰でごろりと横になる。

「Aは約8分、エマはラスト1人で10分持ちこたえたぞ。新記録じゃないか」
「結局捕まったけどね」

囮として逃げ回った割には、あっさりと捕まってしまった。

そう手元の時計を見るレイに言い返す。空を眺めながら少し不貞腐れていると、エマが手足をばたつかせた。

「くやし～！なんで？！なんでノーマンあんなに強いの？私かけっこじゃ負けたことないのに、鬼ごっこじゃ勝てたことないよ！」
レイがエマへ視線を向ける。

「問題。現状ノーマンにあってエマにないものなーんだ？」
「え？！いっぱいありすぎて…」

なんだろう、と首を傾げるエマを横目に、レイは「お前はわかるだろ」と私に言った。それに上半身を起こしながら、答えを返す。

「戦略、でしょ？」
「ああ」
正解だ、と頷いて、不思議そうな表情を浮かべるエマに語り掛ける。

「確かに単純な身体能力ならエマの方が上だろう。でもノーマンは頭(ここ)が強い。ハンパない。そしてこれは鬼ごっこ。まさに戦略を競う遊びなんだよ」
自分の頭を指しながら言葉を続ける。

「標的がどう動くか、「鬼」がどう攻めてくるか…。状況を観察・分析し、常に敵の策(て)を読んで利用する思考が必要になってくる。身体をフルに使ったチェスみたいなもんだ」

レイの言葉がそこで終わると、エマが「……鬼ごっこが？」と逆の方向に首を傾げる。それに私が「鬼ごっこが」と返すと、また不思議そうな顔をした。

「少なくとも、こいつがやってんのはそういう遊び」
いつの間にかそばに立っていたノーマンをさす。

「そこが鬼ごっこの強さでしょ？」と笑うノーマンに、レイは「な？だから強いんだよ」と手をおろした。

その会話に納得がいったようにエマが頷き、口を開く。
「――で当然、レイにも、Aにもあるんだ。『戦略』ってヤツが」

「あるどころか、レイは僕なんかよりずっと策士だよ。Aなんか勘も鋭いから、あそこで転びかけなかったら、きっと逃げられてたし」

「おい、買いかぶんな」
「あれは転びかけなくても捕まってたよ」
「逃げ道なかったし」と髪についた草を払いながら言い返せば、からからと楽しそうに笑った。

「敵の策を読む……か…」
頬に伝っていた汗は、すっかり冷たくなっていた。