もしもお隣さんだったら ページ1
あぁよっこいしょ。
やば、よっこいしょって言っちゃった。
お母さんに怒られる。
恐る恐る振り返ると同時に気づく。
いやそうだ、
私は今日、一人暮らしの為ここへ引っ越してきたんだった。
はぁ、と真新しいリビングの床に座り込むとおでこの汗を拭う。
「…よし。ここの荷物片付けたら今日は終わりにしよ」
わかったことがある。一人暮らしをすると独り言が増える。今気づいたことだけど。
しーんと静かな部屋にいると、何故か落ち着かない。前まで賑やかな家族にいたからかな。
少し寂しくなり、机に置いたスマホでYouTubeを開く。
えへへ。もうお母さんにうるさい!って怒られないぞ。大音量で流しちゃうもんね。
開いた動画は今流行りの人気実況者、キヨ。
たまたま気になってたゲームの実況を見て以来、彼の動画に夢中になってしまった。
なんか癖になるんだよね。
「うぃーす!どーもキヨでーす!」
よし。聞きながら荷解きしちゃお!!
✩・✩・✩
「あっ、忘れてた!お隣さんに渡せってお母さんに言われてたんだった」
慌てて時計を見ると、うん。夕方だけどまだ迷惑じゃない時間帯だ。
手鏡で歪んだ前髪を整え、リップを塗り直す。
服は大丈夫。あ!汗かいちゃったからデオドラントスプレーもしとこう。
第一印象が大事っていうからね。
…よし、よし。大丈夫。
さっと荷物を抱えて玄関のドアを開ける。
✩・✩・✩
周りの住人さんはとても優しい方ばかりのようで安心した。
余ったからこれ食べてね。
なんて心優しいおばさんにお芋まで頂いてしまった。
頂いた芋を落とさない様に腕に抱え、最後のお隣さんのチャイムを鳴らす。
…あれ?居ないのかな。
もう1度チャイムを鳴らす。
……あれぇ??居ないみたいだなぁ。
引き返して明日にご挨拶かな…と少し考えていたら。
急に開かれた玄関のドア。
気づいた時にはドアに腕が当たり零れ落ちる芋。
「はい?は、芋!?」
中の住人さんは若い男性だったようで、ドアから腕を伸ばし芋を拾ってくれた。
「すんません俺勢いよく開けちゃったみたいで…!怪我ないっすか?」
「いえ、こちらこそすみません!少し考え事してたもので…」
慌てて転がっていた芋を広い集め、お隣さんと手が重なる。
「あっ」
と、私かお隣さんかは覚えてないけど同時に声を出し手を引っこめる。
お隣さんは遠慮がちに手を伸ばし、私の腕の中へ芋を置く。
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作者名:夢吏ちゃん | 作成日時:2020年5月14日 7時