【完結】あのね、ずっと好きでした。【KY】

36話 ページ36

会いたくなかった人に会った時ってこんな顔をしてしまうんだなぁ。
なんて、冷静に考えてしまった。

｢えぇ！？凄い偶然じゃない！？フジ君達も遊びに来てたんだね！っていうかデート！？｣
｢おいハル。声でけぇよ｣
｢だってだって！運命感じちゃうんだもん！あっ！知ってるかな！？私たちね！最近付き合ったんだよー！｣

待ち合わせた水族館の前。そこにはフジさんの他に、会いたくなかったカップルが1組待っていた。
背中に冷たい汗が走る。
笑顔の彼女がまるで悪魔の微笑みの様に感じた。
適当に愛想笑いをしてると、フジさんが私の前に立ち、彼女から隠してくれた。

｢周りに迷惑だから騒ぐの辞めてくれる？彼女の手綱ぐらいしっかり握っとけよキヨ｣
｢こいつが勝手に手綱引っ張ってくんだよ｣
｢それホントに遥の事好きなの？好きならちゃんと、こうして離さない様にするでしょ｣

フジさんはするりと私の手を握ると、恋人繋ぎをしてキヨ兄ちゃんに見せびらかす。
キヨ兄ちゃんはギュッと眉を寄せると、視線を逸らした。

｢じゃ、俺達行くから｣
｢え？一緒に回ろうよ！2人より4人の方が楽しいよ。Aちゃんもそう思うよね？ね？一緒に回ろ〜！！｣

遥さんに詰め寄られ、思わず頷いてしまった。
遥さんはやったー！とキヨ兄ちゃんかけより、腕を組んでいる。
フジさんに目を合わせ、ごめんなさいっと思わず謝る。
フジさんは微笑んで首を振ると、小声で私に囁いた。

｢適当に回って別行動しよ。辛かったらすぐ言ってね｣
｢ありがとうございます｣

優しいなぁフジさんは。
ちらっとフジさんの肩越しから2人を覗く。
と、キヨ兄ちゃんとばっちり視線が合ってしまった。
目をそらすのも変だし、心臓はうるさいけど口パクでお は よ と言ってみた。
キヨ兄ちゃんは気づいてくれたのか気まずそうに、は よ って返してくれた。
嬉しくてフジさんと繋いだ手をギューッと力を込めてしまう。
フジさんは、クックックっと喉で笑っていた。

｢じゃあ中入ろー！わぁ〜水族館なんていつぶりだろ〜！！｣
｢おいうるせぇからあんまはしゃぐなよ｣
｢はーい抑えまーす｣

先に中に入ってく2人をゆっくりと追いかける。
大丈夫。フジさんがいる。大丈夫。
そして、この水族館を出る頃には。
私はキヨ兄ちゃんを諦める。
諦めなくてはいけない。

…今キヨ兄ちゃんの腕を組んでるのが、私だったらよかったのにな。
なんて、思っちゃいけないんだ。

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