【完結】あのね、ずっと好きでした。【KY】

33話 ページ33

ずっと忘れられなかった。
遠い高校へ行っても。彼女を作っても。わざと距離を置いても。
それどころか益々会いたくなった。仕舞いには毎日夢にまで出てきやがった。
心臓に巻きついた呪いは俺の体を確実に蝕んでいる。
あいつはいつも幼い顔でキヨ兄ちゃん！と笑うんだ。
そう。俺は兄ちゃん。
いくつになってもあいつの兄ちゃん。
あいつからキヨって呼ばれる日なんてこない。
だからこんな感情なんか持ってちゃいけない。
抱きしめたい。キスしたい。自分だけのものにしたい。愛したい。愛されたい。犯したい。
と最後の気持ちが出た瞬間、気持ち悪さが胃から喉まで膨れ上がる。
俺は、なんて気持ち悪いんだ。
この前までランドセルを背負ってた女の子。
そんな幼い少女に。俺は。俺は。
俺は、気持ち悪い。
いっそ振って欲しかった。
そう思って、大学は地元へ選んだのに。
あいつは俺を振る所か、さらに俺を悩ませた。
初めてあった時、飯食ったとき、遊園地行った時、お泊まりしたとき。
どれほどあいつに芽生えた”気持ち悪い”感情を殺しただろう。
くそ。できることなら今すぐこの腕に抱きしめてどれだけお前に会いたかったか囁きたいのに。
この苛立ちを黒髪の悪友にぶつけてやろうと、行きなれた楽器屋へ向かう。
昨日の花火大会での事も聞きたいしな。
どんどん大股になっていく足は楽器屋の前でとまる。怒鳴り込んでやろうと踏み出した足を引いた。いつも人なんて滅多にいないのに今日は珍しい。

と、外から様子を伺うと。
いつもいる艶のある黒髪と、俺がずっと抱きしめたかった小さな背中がいた。

｢…けど、Aちゃんは…好き？｣

どきっと心臓が驚くぐらい飛び跳ねる。
なんだ？なんの話しをしてるんだ。こっそりと中の様子を伺う。

｢好きですずっと。気持ちは変わらないです｣

ずっと？ずっとって…は？昨日は本屋で出会った友達って。
つまり、あいつらは、俺の知らないところで仲良くなって、それで。
上手くまとまらない心とは裏腹に、俺の頭は回転をはやめた。
テストの空欄を埋めるように1つの回答が頭に浮かぶ。
あいつの好きな人って、フジの事だったんだ。
A、俺な。少しだけ期待してたんだ。
お前の俺を見る目が、少し熱っぽい事。
すぐ頬赤くなるとこ。
お前がもしかして、俺の事を。

目の前の2人は俺を嘲笑う様に、内緒話している。
肩が触れ合ってるあいつらを今すぐ引き離したい。
でも俺にはそんな権利、ねぇんだよな。

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