怖がる女 ページ36
どうしてこんなことをしたのか。そう聞かれたら、怖かったからだと言うしかない。
怖がる女
まさみちゃんと江口さんと私で始まったタイパーティーは、まさみちゃんのいつもの余計な一言で動揺した江口さんが赤ワインの入っているグラスを滑らして、私がそれを被って終わった。
こういう粗相のきっかけをすぐ作るまさみちゃんがすぐにお風呂の準備をしてくれ、私は言われるがままに身体を洗った。部屋に戻ればまさみちゃんが見当たらなかった。その時、まさみちゃんを誘った時、珍しいと言われたことを思い出した。Aが私の知らない男の人を誘うのは珍しい、と。そうだ。確かに珍しい。私たちには共通の知り合いや友人がたくさんいるのに。それなのに私は、江口さんを誘った。
なるほど。一体、どこまでを見込した粗相だったんだろうか。ニッチをじっと見つめる江口さんに同情した。溜息をついて声をかける。
「あれ、まさみちゃんは？帰っちゃった？」
驚いた表情でこちらをみた江口さんから事情を知る。朝早い仕事があるのはシカタナイ。
ハワイの写真を見ていた江口さんが素敵だねと呟いた。これは、コンサートが終わった次の日に6人とスタッフさんで食事した時に撮った写真だ。途中で酔っ払ったスタッフさんがせっかくだから6人で撮ろうと言い出した。私たちはお互い顔を見合わせた。
いつでも撮れるけどあまり撮ってこなかったのかもしれない。だけど15周年だから。デビューした土地に戻ってきたから。せっかくだから撮ろうよ、と。少しの恥ずかしさは達成感とワインで誤魔化せばいいから、と。
「特にこの人はね、ハワイでずっと感動してたの」
私の隣で笑うリーダーは、何を考えていたのだろうか。感動してたんじゃないの。ハワイに来てから毎日泣いていたではないか。嵐でよかった、と。そう言って泣きながら笑ってたじゃないか。いつから嵐ではない道を考えるようになったの。
写真に夢中で、今目の前にいる江口さんに気が向いていなかったことに気づく。
気づいた時にはもう
「俺は、卯月さんが綺麗だと思った」
隙間にはいってくる。
江口さんと私の手は写真の中の私を指しているのに、江口さんは今の私を見つめる。やめて、見ないで。今までずっと守ってきた何かが崩れてしまいそうだから。それが1番怖いことだから。
「今の私も綺麗だと思わない？」
だから私は自信があるように笑って、怖くないふりをするしかないのである。
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M(プロフ) - まぐろさん» まぐろさんありがとうございます。コメント気づかず申し訳ございません。いつかまた読んでいただけますように願っております。 (8月21日 22時) (
レス) id: 3a4ea75011 (このIDを非表示/違反報告)
M(プロフ) - 琥珀さん» 琥珀さんありがとうございます。江口さん夢でもニッチな作品ですが楽しんで頂けて嬉しいです。引き続きよろしくお願いします。 (8月21日 22時) (レス) id: 3a4ea75011 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀(プロフ) - 初めまして！主さんの作品が、私の妄想してた話と似ていて好きになりました！！これからも更新楽しみにしてます！ (8月21日 12時) (レス) @page1 id: 70b8e338d9 (このIDを非表示/違反報告)
M(プロフ) - もう見てる人もいないかもしれませんが少しずつ更新します (8月20日 17時) (レス) id: 3a4ea75011 (このIDを非表示/違反報告)
まぐろ(プロフ) - 何度も読み返してます！これからも楽しみにしています！ (2020年12月18日 12時) (レス) id: 413233b421 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：M | 作成日時：2020年8月3日 0時
