飴と鎖 (ページ7)

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「そう言えば、名前は？」

「結城Aです」

Aちゃんね、と爽やかに笑う

「貴方は」

「私？私は、太宰治」

太宰、治…

「太宰さんは、何故此所にいるんですか？」

んーと考える素振りを見せてから、ニコッと笑って「秘密」と言った

「君こそ何故ここに？」

「私は……」

自由になれる時間が夜しかないから
なんて、言えない。

「秘密…です」

「そっか」と深入りしそうにない言葉にホッと胸を下ろすと

「じゃあ、帰らなきゃ叱られるｯてどういう事？」

その言葉にビクッと反応してしまった。
何でもないふうにしなきゃいけないのに…

「それは…」

「流石に高校生が5時は早すぎるよ。おかしいじゃないか、気になるのも当たり前だよ」

どうしよう…。この人感がいい、嘘をついたらバレてしまう気がする。

「実は今日は…彼氏の誕生日で、パーティーに遅れちゃったら冗談で怒られるｯて意味ですよ。早く行きたかったし…あの時は酷い言い方してすみませんでした！」

バッと頭を下げると、太宰さんは「…うん」と何かを悟ったように頷いた

「ねえ、Aちゃん」

「はい」

「つくならもっとマシな嘘ついたらどう？」

「…え……」

なんで？
どうして嘘だってわかったの？

「今日の五時頃に会った時より怪我が増えてる、生傷から血が出てるし、口も切れてる。
Aちゃん、君は彼氏に___」
「やめて!!」

はっと声を荒らげた事に後悔をする
カタカタと震える指

「も…やめてください。お願いだから…この傷と、彼氏の事は……忘れてください…ｯ、あなたを巻き込みたくない…！」

あったばかりの人にこんなに本心を破られるなんて思ってもなかった。
ホントは助けて欲しい、あの人から解放してほしい。だけど……

今日あったばかりの人を、巻き込みたくない。