第14話 個性把握テスト ページ18
「今から個性把握テストを始める。予定の時間よりだいぶ過ぎてしまったから、さっさと動け」
担任らしいよ、このモジャモジャ。
グラウンドに行くまでである程度の情報を与えてもらいました。これから個性ありの体力測定みたいなのやるんだって。んで、最下位は除籍らしい。厳しい世界だ。
そして時間を遅らせた張本人である私にはやっぱり注目が集まってる。なんか迷惑かけたみたいで、ごめん。
バリエーションに富んだ個性をみんな披露しつつ、どんどん種目は進んでいく。人の個性も記録も興味無いので、私は順番が来るまでボーとしてる簡単なお仕事。
一応スパイなんだからなんか調べた方がいいのかと思ってたけど、弔くん曰くそういうのは本命の内通者がやってくれるらしい。楽でいいね。
「次、爆豪と武陵。位置に着け」
50メートル走で名前が呼ばれてしまった。さっきから止まらない欠伸をしながら歩いていく。
2人1組で走るらしい。隣はどんな子なんだろ。
「あっ」
今度は声が出てしまった。なんせ油断してたから。
なんと隣で走るのはあの暴言君。ソワソワしてて落ち着かない彼は、じっと私を見ていた。
なんとも気まずい。でもさすがにここは挨拶くらいしないとダメだ。だったさっき、あっ、とか言っちゃったもん。
「えっと、お手柔らかに…？」
「………おう」
わかったような分かってないような返事だなぁ。もっとハキハキした子だと思ってたんだけど、人は見かけによらないらしい。
なんか遠くの方で「かっちゃんがちゃんと返事してる……！！！」て聞こえたような気がしたけど、多分気のせいだろう。
「位置についてー、よーい、」
そうこうしてる間になんか始まってる。生まれて始めて50メートル走をするので、いつ走り出したらいいのか分からない。
「ドン」
BBBoon！！！！
鼓膜ちぎれるくらいうるさくて、思わず耳を塞ぐ。土埃も舞ってるし、なんなら目に入ったしもう散々だ。
あと走るの忘れてた。いつの間にか暴言君は隣にいなくて、慌てて私もスタートする。
身体能力はめちゃくちゃ高い私だけど、さすがに暴言君に追いつくのは無理だった。
「爆豪4秒13、武陵7秒04」
正直記録なんてどうでもよかった。それより何より
「目に、砂入って、涙止まんなく、なっちゃったぁ」
ボロボロと落ちていく涙はどんどん増えて、周りの人達が凍ったように固まっているのが見えた。
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作者名：きくらげ | 作成日時：2021年7月25日 1時
