【ヒロアカ】紙香様は、期待されたいお年頃 (ページ3)

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3:私を失望させないでページ3

紙香は超人的身体能力を発揮していた。やはり、運動系ではない個性の人は何人かいて、彼らはごく平均的な数字を出していった。

そんな彼らを横目に見て胸を撫で下ろす紙香。彼女はその身体能力で個性を使わずに中位くらいには食い込んでいるだろう。

残りボール投げと持久走を残す中、早くも紙香は肩の力を抜いた。恐らく最下位は緑の髪の少年だろう。

そんなことを考えている内に自分の順番になりボール片手に円に入る。

「全力で投げろ。円の外に出なきゃ何してもいい」

その気だるけな声に完成された笑顔で返し、ボールを構える紙香にもう一声相澤が発する。

「何を考えてるか知らんが、これは個性把握テストだと言うことを忘れるな。最下位じゃなくても俺の意に沿わないなら即刻除籍もありえるからな」

「自由と職権乱用を一緒にしてはダメよ、イレイザーヘッド」

それは鈴のような声であった。大きくない筈なのに響く高い波紋は、その場を黙らせるのに最適である。

可愛い、何処か馴染みがあるような。かと言って触れることが出来る代物ではない。ありえない程の高みにいる者の声であった。

鈴の音はまだ続く。

「後からルール変更なんて、ゲームで最も嫌われる行為だわ。私、考えることが好きなの。だからそんな事されたら、イレイザーヘッドのこと嫌いになってしまうわ。」

リン、リンと静かに鳴る鈴の音はどんどん大きくなっていく。何かを囃し立てるようにして。

「GM(ゲームマスター)なら、ルールは守らなくちゃ。貴方がやろうとしてる事は、嘘よりももっと酷い。信用なんて簡単に底をついてしまうわ」

そこで相澤を方を向くのをやめた紙香は、今度こそボールを持ち全力で投げる。それは、個性を使った者と比べると低いが、個性なしとは思えないほどの結果であった。

「ほら、私を誰だと思ってるの？こんなこと簡単に出来るのよ。」

スタスタと相澤の方へ歩いていく紙香は、それだけで絵になるほどであった。

「ねぇ、イレイザーヘッド。お願いだから私を失望させないで」

それだけ言うと紙香は相澤から離れ、待機場所へと歩んでいった。