境界の果て【派生作品】 (ページ4)

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「赤マントさんとか、神様とか以外にもいるの？」

ぽんやりとした、何も考えていなさそうな目で聞いてきた彼女。
せっかく彼女が聞いてくれたのだから、とボクの方もそれに応えてみせる。

「有名ドコロだと花子さん……太郎くんとかやみ子さんとか似た子たちもいるみたいだけど、実際に会ったことあるのは花子さんくらいかナ。いつの間にかボクの一部になってた仲間に色問蝙蝠なんてのもいたし……」

「花子さんに会ったことあるんだ」

思わぬところで食いつかれ、何を話そうとしていたかが吹き飛んでしまった。はて、霧雨亡霊区域とトイレの花子さんに何か繋がりはあったろうか？

「ボーダーメーカーの手伝いするようになってから長いからナ……かなり前だけど、花子さんと契約してたヒトもいたよ」

「ふーん……」

「もしかしてライバル視してる？ボクも花子さんにライバル意識はあるけどナ」

改めて見ると、花子さんも霧雨亡霊区域の案内人も、赤と白がメインカラーの少女という点では似通っている。にも関わらず、花子さんは都市伝説界の圧倒的レジェンド、それに対して霧雨亡霊区域の無名さときたら！
それは確かに対抗意識を燃やしたくなるのも納得だ、と思っていたが彼女としては気になる理由は違ったようだ。

「……暁人さんと都市伝説の本、色々見てみたんだけど、花子さんは昔からずっと見開きで紹介されてたんだ。でも、わたしは会ったこと無かったから……人気の都市伝説ってどんなふうなのか気になっただけ」

「そっか。本人に会ったことあるけど、人間が語ってる通りの見た目で、かなりお転婆で勝ち気な感じだったよ。キミの方が可愛いし人気出ても良いとは思うけどナ……」

「そう？」

「そうだよそうだよ！ニンゲンの世界で都市伝説ブームが起こった時に花子さんのアニメなんか作られちゃってたし、ボクはいっつも花子さんとか妖怪少年とかに退治される悪者役ばっかりだし、人間に好かれてるぶん力も強いからって偉そうで……」

一度話し始めてしまうと、もう花子さんに対する鬱憤を抑えきれずにひたすら愚痴を吐いてしまう。
どれほどの時間が経っただろうか、日の陰ることのない世界で時間の流れというものを掴むことはできないけれど、随分と長い間くだらない愚痴を話してしまった。そんなボクの横で、彼女はずっと話を聞き続けていた。