境界の果て【派生作品】 (ページ24)

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番外：消せない愛ページ24

今日も雨が降るばかりで、何の変わり映えもしない世界。
何か退屈しのぎになるものは無いだろうかとポケットの中を探ってみると、何かビニールの袋に包まれたものが出てきた。リボンで口が閉じられているが、蝶結びではなく固結びにされていて非常に開けにくい仕上がりだ。

「それ、なぁに？」

ボクの傍らの彼女がそっと覗き込んでくる。無理やりに袋を開けると、普段のボクを模したような不恰好なカタマリが出てきた。確か、いつだったかのバレンタインに彼女からもらったモノだ。

「むかーし、キミがくれたお菓子だよ」

「そうなんだ……」

作った当人であるはずなのに、あまりピンときていない様子の彼女。ボクは菓子のひとかけらを彼女に手渡し、残りを一口齧ってみた。……体が拒絶する刺激が体内に広がる。
同じものを食べたはずの彼女は、平然とした様子でこちらを見ている。

「なんで、ずっと持ってたの？」

「……なんでだろうナ」

腐っている……というわけでもなく、元から前衛的な味のするお菓子。ボクがこの世界にいることを受け入れてくれた彼女が、ボクのことを覚えてくれて、ボクらのために作ってくれたお菓子。たとえどんな出来栄えだって構わない。彼女が手渡してくれたというだけで、この世界のどんなモノより素晴らしいモノになるのだから。彼女の存在そのものはこんなにも儚いのに、彼女の生み出すモノはこの世界に生きる者たちにどこまでも鮮烈で、強烈な印象をもたらすというのがどうにも感慨深い。
あの日もらったお菓子は大切にしまっていて、今でも時々食べてはこの強烈な味と共にキミの笑顔や思いやりを思い出していたんだ……なんて、到底本人には言えないけれど。

「赤マントさん、嬉しそう……美味しかった？」

「……ウン、とっても」

ついボクが独り占めしちゃったけれど、あの日みんなにも食べさせてやればよかったかな。そうすれば、何より強く彼女のことを彼らの記憶に留めさせられたもしれないのに……

ボクは手にした菓子をまた齧った。
彼女の味がボクの中に広がっていく。彼女との思い出がボクの中に刻み込まれていく。