境界の果て【派生作品】 (ページ18)

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忘却の成れ果てページ18

霧雨の降りしきる中、案内人に手を引かれて瓦礫の山を越えていく。出口へ向かう道中、ずっと無言というのもなんだか味気ない気がして、ボクは彼女に声をかけてみた。

「ねえ、気になることがあるんだけど……」

けれど反応はない。

「おーい、聞こえてる？」

何度か声をかけてみて、ボクははっと気がついた。ボクの背丈があんまりに高いので、ボクの声は彼女の赤い傘に遮られてしまっているのだ。
申し訳ないことをした、と思いながらしゃがみ込み、改めて話しかけてみた。

「ねえ、気になることがあるんだ」

ちょっと間を置いて彼女は立ち止まり、真っ白な頬をこちらに向けた。

「……どうしたの？」

「別に大したことじゃないんだけど……時々白い亡霊みたいなのがいるの、あれって何？」

「ああ、あの人たちのこと」

彼女はゆったりと辺りを見渡した。ボクも真似して周囲を見てみれば、ふらりと現れては消えていく白い影たちが目に入った。彼らはボクらのことなど見えていない様子でただそこにある。

「みんな、ここで探し物をしてるの。もう見つからない探し物を」

「探し物、かぁ……」

「ここに長くいたら……いつかはああなっちゃう」

ボクは繋いだ案内人の手を見つめた。
彼女の手は小さく細く繊細で、赤黒く澱んだ色のボクの手の中でひときわ白く輝いて見える。その白さはまるであの亡霊のようなモノたちを思い起こさせるようで……ひどく不安になった。
ほとんど無意識のうちにボクは彼女の体を抱え上げ、きゅっと身を寄せていた。

「……どうしたの？」

彼女の体は何も持っていないのと変わらないくらいに軽く感じられて、けれども確かにヒトの温もりを持っていた。髪の毛に鼻を寄せてみると、ほんのり落ち着く香りがする。二人で仲良く傘の下、胸の奥がきゅっと不思議な感じになる。

「……こうしたほうが、キミの顔がよく見えるしお話もしやすいかなって」

「そうなんだ」

「さ、出口に行こう。どっちに歩いていったらいい？」

「えっと……あっちかな」

「了解！」

ボクは案内人を抱きかかえたまま、彼女の指さす方へ歩き始めた。