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歩けども歩けども、全く変わり映えのない景色が続いている。
しとしとと降り続く霧雨に濡れ、雫が肌を伝って落ちていく。
どれほど歩いたのだろう。
何のために歩いていたのだろう。
ここはどこなのだろう。
ぼんやりとした頭で思い出そうにも、どういうわけか濃い霧の中にでもいるみたいに何も見えてこない。
必死に記憶を探ってみれば、過去についての記憶の代わりに脳内で渦巻くのは焦燥感と恐怖。
廃墟のような空間に、ボク一人だけが存在している。
時折、人影のようなものを見つけるが、それはただヒトを模した霧か何かに過ぎないのか、ボクの存在を認識すらせず漂っている。
世界そのものに拒絶されているような、そんな錯覚。
「ヒトならざる者、この世に在るべきでないモノよ」
「無辜の民に仇なす化物め！」
「帰るがいい、貴様の領域に。そして二度とこの世に現れるな」
走馬燈のように蘇ってくる、かつてヒトからかけられた声。
ボクはこのまま一人でいるのだろうか。ボクはもう誰にも触れられず認知もされず消えていくのだろうか。
ボクはただ、そこに生まれ落ちただけなのに。
ボクはただ、そこで生きていたかっただけなのに。
ボクに生きる資格などないのだ。
ボクは無意味で無価値なものだ。
ボクはただ孤独に打ち捨てられるモノなのだ。
「……ひとりは、いやだ」
ふと、脳裏に浮かんできたのはボクに向かって笑いかける誰かの顔。
何かを取り囲んで楽しげに笑う声、任せたと言ってくる声、不機嫌そうな顔の誰か、誰かの励ますような声、怪我してボロボロな誰かの姿、頼もしげな誰かの背中……
そして、今にも消えてしまいそうな儚げなあの子の微笑み。
「探し物は見つかった？」
その声はボクの耳に直接響いてきた。
見下ろすと、真っ赤な傘を刺した見知らぬ少女がそこに立っていた。
「あなたの探し物は何？」
彼女はただじっと、ボクの返事を待っているようだった。
ボクの探し物……そうだ、ボクは帰らないといけない。
「……うちに、帰る道はどこ？……みんなのところに、帰らないと……もう、拒絶されたくない。ここにいるボクを受け入れてくれるみんなのところへ帰りたい……」
彼女はじっとボクを見ていた。
その目を見ていると、どういうわけか安心感が湧いてきて、今まで抑えてきた寂しさが爆発したみたいに涙が溢れてくる。そしてボクは、彼女のことをぎゅっと抱きしめていた。
「……ボクを、一人にしないで……」
ラッキーカラー
あずきいろ
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