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ボクは一人、地面に倒れていた。
どれ程の時間が経ったのだろう?
相変わらず分厚い雲に覆われた空は、その明るさを変えることなく無限に霧雨を降らせている。ここでは時間について考えるだけ無駄、ということなのだろう。
そもそも何故ボクはここで倒れている?
何か大切なものを探していたような気がする。
でもそれが何だったのか思い出せない。
ここに来るまでの経緯は忘れてしまったけれど、何故ボクがこの区域の中にいるのかは何となく察している。
恐らく、ボーダーメーカーか都市伝説の誰かがボクの「本性」に気づいてしまった。それが原因で最終的に、霧雨亡霊区域の能力でボクの存在そのものを無かったことにすることになったのだろう。
であれば、きっと案内人は現れない。
ボクはこのまま消えていくんだ。
大切な仲間だなんだと言っておきながらずっと彼らを騙し続けていたボクの末路としては……幸せな方だろう。だって、霧雨亡霊区域の中で消えていけるなら他の考えうる結末の中では一番マシなんだから。
本当にボクがいなかったことになるのだろうか?
ボクは東境のボーダーメーカーたちにかなり大きな影響を与えていたはずだ。
そして、霧雨亡霊区域自身にも。
ボクが都市伝説たちを取りまとめてボーダーメーカーたちとの仲介役をやらなければ契約に至らなかった子たちもいるはずだ。ボクの今までの行いがなかったことになるなら、ボクが霧雨亡霊区域のことをボーダーメーカーたちや他の都市伝説に教えてやったことも消えてしまうのだろうか?
もし本当にそうなってしまったら……
「……ここから、出ないと」
ボクは消えたくない。
ボクはまだ現世にいたい。
世界でやり残したことがたくさんあるのだから!
ボクは立ち上がり、マントを羽織りなおして歩き始めた。
ラッキーカラー
あずきいろ
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