中島敦の親友 (ページ14)

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親友12人ページ14

僕の上で、二人のにらみ合いが続く。
不穏な空気を打ち破ったのは……

「まあまあ、国木田くん。」

太宰さんだった。

「君がやると情報収集が尋問になる。社長にいつも云われているじゃないか。」

押さえ付けられていた体が解放されて、思わず肩を擦る。
…それでも不満なのか、Aは鋭い目付きで二人を見ていた。

「大丈夫だから」と声をかけたとて、しばらくは無駄だろう。
二人は……特に国木田さんは、完全に敵として認識されている。

それを見て、何となく孤児院でのことを思い出した。

昔、僕が他の奴等に絡まれた時も、同じような目をしていたからだ。
Aと仲がよかった子だろうと関係なく。年や性別も無視して睨んでいて。

ここ数年は見ていなかった表情を、こんな場所で見ることになるなんて思わなかった。

「それで？」

『…敦がいた孤児院は、虎に壊されたんです。』

……っ。

太宰さんの目が見開かれる。

『…死人こそ出ませんでしたが、畑も倉もボロボロで……“口減らし”に敦は追い出される所でした。』

「でも、そこをAが助けてくれたんです。」

今でも覚えてる。
僕に向かって「この世の邪魔だ」と吐き捨てる孤児院の人達に向かって、「敦は邪魔じゃない」と。「アンタらがそんなに要らないと云うのなら、私が貰ってやる」と。

腕を引いて連れ出してくれた。

昔と変わらぬその姿に……救われたような、そんな気がしたのだ。