検索窓
今日:4 hit、昨日:1 hit、合計:1,345 hit

ページ6

"朝"、鈴音は、来ていない。
恐らく、家の用事で忙しいのだろう。
この手紙、どうしようか。
「"久々"に、歩くとしようか。」

ここから配達屋まで、山越え、神社の前を通り過ぎ、忌み地へ入らなくてはいけない。
"忌み地の縁"は、"後で切れる"からいいとしよう。

取り敢えず、行くことにする。


山を越えたところに、困っている老婆がいた。
「どうか、したか?」
『嗚呼、すまんのぉ。蜜柑が、そこを転がったのさ。どうか、助けてくれんかね。』
「それは大変だ。ちょいと、行ってこよう。」
『すまんのぉ・・・頼んだよ。』

蜜柑は、木の根に引っかかっていた。
「おぉ、これか?取り敢えず、渡しに行こうか。」

「持ってきたぞ。これでいいか?」
『おぉ、有り難や、有り難や。お礼に、落ちてない蜜柑をいくつかあげよう。』

そう言うと、老婆は風呂敷で蜜柑を包んで没命の腰元にくくった。
『その風呂敷は、返さなくて良い。お前さんに、よく似合う。有り難や、有り難や。』

時間を食ってしまったが、助けられたならそれでいい。
没命は、山を降りていった。


神社の前に、人だかりができていた。

「どうしたのだ!」
『お前さん、見ない顔だな。』
「それはよい。何があった?」
『実を言うとだな、あの忌み地の化け物がこの神社に現れたのだ。』
「ほう、それは。」
『まさか・・・行くのか?』
「嗚呼。」
『何も持っていないのにか?行くなら俺の小太刀でも持ってけ。』
「いらぬ。小太刀よりも良い物を持っておるからな。」

大きな鋏を包んだ黒い包帯を取る。

「これは、あの忌み地で取れた物だ。」
『そんな物、持ち歩いていいのか?"神でも怖じけずく程の邪鬼を纏っている"ぞ?』
「この鋏は、持ち主がいないと暴れるのだよ。」
『だから持ち歩いているのか・・・行って来い。』
「言われずもがな、だ。」


「誰か、おらんか!」
『嗚呼、いるぞ!誰かいるなら手伝ってくれ!』
「わかった。すぐに行こう・・・・・・すまぬ、化け物に囲まれたようだ。」
『なら、そっちの化け物を頼む。』
「わかった、そうしよう。」

この鋏があれば、一瞬である。
「"呪イノ鋏ヨ、我ヲ殺スモノヲ殺セ。残ラズダ。"」

一瞬の出来事には、矢張り慣れない。
だが、仕方ない。
この鋏を拾ったのは、確かに自分なのだから。

そんなことを考えていると、鋏は血塗れでかえってきた。
「ありがとよ。」

真っ赤な神社を後にした。

・→←・



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (3 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1人がお気に入り
設定タグ:妖怪の都 , 洋墨と彼岸花 , 小説 , オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:極楽地獄 | 作者ホームページ:無い。  
作成日時:2020年1月25日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。