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"朝"、鈴音は、来ていない。
恐らく、家の用事で忙しいのだろう。
この手紙、どうしようか。
「"久々"に、歩くとしようか。」
ここから配達屋まで、山越え、神社の前を通り過ぎ、忌み地へ入らなくてはいけない。
"忌み地の縁"は、"後で切れる"からいいとしよう。
取り敢えず、行くことにする。
山を越えたところに、困っている老婆がいた。
「どうか、したか?」
『嗚呼、すまんのぉ。蜜柑が、そこを転がったのさ。どうか、助けてくれんかね。』
「それは大変だ。ちょいと、行ってこよう。」
『すまんのぉ・・・頼んだよ。』
蜜柑は、木の根に引っかかっていた。
「おぉ、これか?取り敢えず、渡しに行こうか。」
「持ってきたぞ。これでいいか?」
『おぉ、有り難や、有り難や。お礼に、落ちてない蜜柑をいくつかあげよう。』
そう言うと、老婆は風呂敷で蜜柑を包んで没命の腰元にくくった。
『その風呂敷は、返さなくて良い。お前さんに、よく似合う。有り難や、有り難や。』
時間を食ってしまったが、助けられたならそれでいい。
没命は、山を降りていった。
神社の前に、人だかりができていた。
「どうしたのだ!」
『お前さん、見ない顔だな。』
「それはよい。何があった?」
『実を言うとだな、あの忌み地の化け物がこの神社に現れたのだ。』
「ほう、それは。」
『まさか・・・行くのか?』
「嗚呼。」
『何も持っていないのにか?行くなら俺の小太刀でも持ってけ。』
「いらぬ。小太刀よりも良い物を持っておるからな。」
大きな鋏を包んだ黒い包帯を取る。
「これは、あの忌み地で取れた物だ。」
『そんな物、持ち歩いていいのか?"神でも怖じけずく程の邪鬼を纏っている"ぞ?』
「この鋏は、持ち主がいないと暴れるのだよ。」
『だから持ち歩いているのか・・・行って来い。』
「言われずもがな、だ。」
「誰か、おらんか!」
『嗚呼、いるぞ!誰かいるなら手伝ってくれ!』
「わかった。すぐに行こう・・・・・・すまぬ、化け物に囲まれたようだ。」
『なら、そっちの化け物を頼む。』
「わかった、そうしよう。」
この鋏があれば、一瞬である。
「"呪イノ鋏ヨ、我ヲ殺スモノヲ殺セ。残ラズダ。"」
一瞬の出来事には、矢張り慣れない。
だが、仕方ない。
この鋏を拾ったのは、確かに自分なのだから。
そんなことを考えていると、鋏は血塗れでかえってきた。
「ありがとよ。」
真っ赤な神社を後にした。
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