４章【愛の戯れ】 ページ12
昨日、夢で見た少女が気になって仕方がない。
「延命、散歩に行ってくるよ。」
「はい、兄さま。行ってらっしゃい。」
いつもの散歩コースか、行ったことのない散歩コースか。
没命は迷っていた。
いつものでいいかと思った。
里へ降りてみると、いつもとは違う出来事が起きていた。
男の人だかりができていた。
なんだろうと覗くと、
"赤い雨具をきた少女"が殴られたり、蹴られたりしていた。
(男は女を守る者なのに、恥だ。)
「お前ら、その子が可愛そうだろ、やめてあげろ。」
男達は、没命に気付いて殴りかかろうとする。
ある者は、刀で切らんとする。
「
男達は震え上がった。
没命の体は、洋墨のように黒くなっていった。
両手で鋏を持ち、鋏を動かしながら男達を切ろうとする。
鋏、動かせば
ジャキンジャキンと鉄の音。
鋏は、切れば切るほど赤くなる。
黒包帯も、赤く染まっていく。
緑の目は、濁った赤に染まる。
鋏で全員切り殺し、男達の家も切り壊す。
五分程経った頃。
"赤い雨具を着た少女"が、理性を無くした没命を止めようと近づく。
すると、没命の動きは止まる。
没命の姿は元に戻る。
「ごめんね、里が、壊れちゃった・・・。」
「いいの。私、ここに住んでないから。」
「そっか。なら、よかった。」
やっぱり、夢の子と同じ見た目、声。
「実を言うと、昨日、君の夢を見た。」
「どんな？」
ちょっと興味を持ってくれたようだ。
「君に予言をされて、森から帰ろうとしたら雨が降りだした。」
「何色？」
「赤だったよ。君は、庭で死んでいた。」
「あの森はね、私が死ねば赤い雨が降る。他人が死ねば黒い雨が降るの。」
「あ、蜜柑あげるよ。」
君に怖いところ見せたから。
なんて言わない。
この蜜柑は、あのとき老婆に貰っていつでも食べれるようにと冷やしておいたものだ。
「ありがとう。」
少女が言う。
「あ、名前は？」
少女に聞かれる。
「僕は、没命。妹がいるんだ。名前は？」
「私の名前は、死楽。貴方のこと、好きになったみたい。」
好きになった・・・か。
ちょっと、嬉しいかな。
「よろしく、死楽ちゃん。」
「うん、没命、よろしく！」
明日、ここで会う約束をして、帰った。
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