【浮世世界】（壊） (ページ36)

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小話「狼は吠える」ページ36

外が少し騒がしかった
だから、目が覚めた
隣で寝ているネクを起こさないようにベッドから降り、窓まで歩く。そして覗く。
アッシュ(………………空が…灰色だ。)
窓から見ても、街の家に灯りなんて付いていない。
アッシュ(誰も起きてはいない…まぁ、普通か。)
その時、下の階から物音がした。
どこかの扉を開ける、そんな物音。
アッシュ(…誰かが入って来たのか？………いや、それはないな。扉には閂をしていた筈だし、この館に近寄る人は物好きでもない限りは存在しない。)
アッシュ「………………。」
少し、考えてみる。
少し、考える。
…眺めていた窓に、見知った髪色の2人が映った

アッシュ(あ………アイツら……………！！！)
アッシュ(なんで、なんで起きてんだ！！！)
アッシュ(急いでこの館に戻さねぇと。)
アッシュは急いで下の階に降りる
アッシュ(………………どこも…開いていない…！？)
いつもそうだ。
灰色の空の日。
この日には、いつも誰かが選ばれる。
そして、今回はあの2人だった。
…………あの方向には、巨大な焼却炉がある。
ー
扉にぶつかった。
閂を上げてから開いた扉にぶつかった。
でも、扉は開いたままだ。
なら、何にぶつかった？
何に、ぶつかる必要があった？

無理矢理でもいい。ここから出てあの2人を連れ戻さないといけない。
……………………後ろに下がって走る。今の姿は狼だ。この大きな身体なら上手くいく筈。
ー
無理矢理外に出られた。焼却炉はまだまだ遠いらしい。
……よかった、よかった。
あのとき助けてくれた彼らを置いてはいけないから。
あのときついて行くと笑ってくれた俺を見捨てられないから。
だから、吠えよう。
ー館・屋根の上ー
お前達の帰路を示す目印になろう。
お前達の幸福を願う存在になろう。
今度は……大丈夫。もう、簡単に暴れたりなんかしない。
身体を落ち着かせて息を吸う。
アッシュ「あおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉんんん」
俺の声が聞こえていたらしく、こちらに近付いてきた。
■■■「あれ、狼さん。」
■■■「ホントだ。狼だ。」
アッシュ「……。」
■■■「狼さん、僕達お家に帰りたい…。迷子になっちゃった。」
■■■「さっきまではお家に帰りたくなかったのに、狼さんの遠吠えを聞いたら帰りたくなったよ。」
それを聞いたアッシュは屋根から降りた。
■■■「もしかして、乗せてくれるの？」
■■■「いいの？」
2人が背中に乗った事を確認したアッシュは、館の中へと戻っていった………