甘くて苦い、チョコレートのような。【wrwrd】 (ページ33)

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甘味32 ページ33

貴方side

『あーえーいーうーえーおーあーおー』

誰もいなくなった教室で発声練習を始める

ひとしきり終えた後、台本を手に取りじっと見つめる

ゆっくりと息を吸い、演劇部だった時のように役の中へ入ろうと目を閉じ____

「ん、何してん？」

『ヴエッ、ゲホッ、ｺﾞﾎｯ』

いきなりの登場にむせてしもたやんけ、許さん

『劇の練習してんねん、邪魔すんなら帰ってーな』

振り返らずにそう告げる

「じゃあ、邪魔せーへんから見とってええ？」

『なんや、シャオちゃんやったんか

ええよ、練習付き合ってもらう時もあるかもしれんけど』

もう一度、役の中へ入り込む。

『あぁ、あの美しいお嬢様は一体誰だったのか‥‥』

‥‥‥‥‥‥‥

『もう一度‥‥もう一度だけでいい、彼女の名前を呼びたい‥‥っ』

‥‥‥‥‥‥‥

『運命とは残酷だ‥‥神はどうして、私と彼女と出会わせたのか‥‥』

‥‥‥‥‥‥‥

『シャオちゃーん、ちょっとええ？』

「ん、なんや？」

青年がお嬢様を連れて逃げる直前のシーンで一旦切った

ここは、1人では練習できないシーンだ

『ちょぉーっとそこ、立っとって』

「？お、おう」

彼の手を握り、真剣な声色になる

『ここから逃げましょう、ここの人には見つからないような場所で2人で幸せになりましょう』

「へ、っ‥？」

『私なら貴方を守ってみせます、どうか、私に身を委ねて‥‥っ』

シャオロンが私に体を預けてきた

『およ？シャオちゃん、別に何もせんで良かったんやで？』

「へ、あ、‥‥っ～！Aのバカ！！」

そう言うと、全速力で教室を出て行った。

『えぇ‥‥』