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「あー、もう邪魔」
なれない松葉杖で時々躓きそうになりながら歩く。
だんだんとイライラが溜まってきて、カツン、カツン、と杖の音が大きくなる。
病室を出てきたのはいいけれど、まず病院にいるのかすら分からないし…
と、ふとそこで思い出す。
確かあの日会った時、出口ではなく内科の病室の方へ去っていったような…
確信は持てないけれど、そのくらいしかあてがない。
受付の人にでも聞いてみようか。
でも…苗字が分からない。
あの時咄嗟に名前を読んだけれど、名前だってもう変わっているかもしれないし。
駄目元で受付の女性に話を聞く。
「Aさん、ですか…この病院で入院されている方なんですよね。苗字は分かります?」
「それが分からなくて…入院しているかも分からなくて」
「そうですか…ですと探すのは難しいかもしれません。申し訳ありません。」
「そう、ですよね…」
まあ、上手くいくはずもないか…
またどこかで会えたらいいんだけど。
「ありがとうございました」
軽くお辞儀をして、受付に背を向ける。
すると、柱に貼ってあった1枚のポスターに目が止まった。
"8月8日,9日 〇〇地区花火大会 "
花火、か…
ふとAのことを思い出す。
いなくなる前に何がしたいかと聞いた時、花火がみたい、と言われて。
本当は大きな花火を2人で見たかったけれど、生憎そんな季節でもなくて、結局売れ残った線香花火しか出来なかった。
Aは満足そうだったけれど、本当は大きな、空に打ち上がる花火を見せたかった。
今度こそ、見れたらいいな。
見つけられるかどうかすら怪しいけれど…
振り返って帰ろうとした時、ふと近くから誰かの声がした。
「花火かぁ…行きたいなぁ」
鈴のなるような綺麗な声が、雑音の中、すっと耳に届く。
すぐに当たりを見渡すと、いつの間にか僕の横にAが立っている。
でも、今日は前とは違って病院の部屋着を着ている。
「A、」
「ん…?あ、あなた前の…」
覚えててくれた。嬉しさが込み上げてきたのもつかの間、Aの表情が曇っていく。
「ストーカー」
「え、」
そう、僕に背を向けてしまう。
というか、ストーカーって…
色々誤解が生まれてしまっている。
まあしょうがないと言えばしょうがない。
「待って!」
今度こそ、Aの手を掴んだ。
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優衣(プロフ) - 夢じゃなくて、本当になればいいのに😭続き楽しみにしてるよ✨ (5月7日 22時) (レス) @page12 id: fa32b0552b (このIDを非表示/違反報告)
優衣(プロフ) - 夢主ちゃんがまた、消えてしまうんじゃないかって思うと怖い、、、続き楽しみにしてるよ✨ (4月13日 19時) (レス) @page12 id: fa32b0552b (このIDを非表示/違反報告)
寺乃(プロフ) - 優衣さん» コメントありがとう!ごめん結構更新遅れた…優衣ちゃんからのコメント毎回ほんとに嬉しいよ😭💕これからもマイペースすぎると思うけどよろしくね! (3月14日 18時) (レス) id: db666116fc (このIDを非表示/違反報告)
優衣(プロフ) - 夢主ちゃん、どこが悪いのかな❔無一郎あとすこしで退院するんだ😊続き楽しみにしてるよ✨ (3月10日 0時) (レス) @page11 id: fa32b0552b (このIDを非表示/違反報告)
寺乃(プロフ) - シルビア★姉貴さん» ごめぇぇんっ!!だよね!?この新作も前から温めてたやつで…😭😭シルビアちゃんチャットの方見れる??そっちで話したい! (2月28日 16時) (レス) id: 814390a70f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:寺乃 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Mui08081/
作成日時:2024年1月22日 18時