10 ページ11
・
目を覚ますとすっかり見慣れた病室のカーテンが目に入る。
今の時刻は7時。
さすがにまだ朝食も食べていないし、Aのところへは行けない。
こういうのも懐かしいなぁ。
昔は、夜中しか会えなかったから、それまでの時間がすごく長く感じた。
Aが死んで、絶望に包まれていた時、夜中。丑三つ時と呼ばれる時間に、ある橋の上に行くと死者に会えるなんて言う噂話が耳に入った。
あの時は、本当にどうかしていたんだと思う。
そこまで仲がいい訳でもなくて、顔を合わせるとお互いに悪態をついていた、ただの同僚。
なのに、そんな迷信じみたものを信じて会いに行った。
"あの時守れなかったことを謝りたいから"
ただ、それだけの理由だった。
Aの姿を見た時、僕は夢でも見ているんじゃないかと思った。本当に会えるなんて思っていなかったから。
ついに幻覚を見るまで頭がおかしくなったかと思ったけれど、目の前のAはいつもと同じように、眉をしかめていた。
なんでこいつが、というように。
当たり前の反応だ。
でも何故か、来るなと言われたら来たくなってしまう。
鬼狩りの仕事ももはやく終わらせて、毎日あの橋に足を運んだ。
毎日、今日で会いに行くのはやめようと思っていた。
どうせいつか別れは来てしまうんだから。
毎日来るなと眉を顰められているんだから。
でも、
まだ謝れてない。まだ、まだ。
そうしているうちに、あの日が来てしまった。
謝りたい。そんなのは言い訳だった。
本当は、何よりAに会いたかったんだ。
不意に見せる笑顔を、ずっと見ていたかった。
怒っていても、何一つ不快なんかじゃなくて、
ずっと一緒にいたかった。
でも、叶わなかった。
叶うはずがなかった。
あの時は。
でも、今は違う。
しっかりとAが存在していて、触れられる。
でも、Aはなにか隠してる。
それを、知りたいけれど、知りたくない。
もし、と悪い方向にばかり考えてしまう。
怖くて、胸が締め付けられる心地がする。
でも、きっと大丈夫。また僕の前から消えるなんて、ありえない。
そう思わないと、耐えられない。
カーテンの後ろから聞こえた看護師の声に、体を起こす。
ここで気に病んでいても仕方ない。今日もAに会いにいくんだから。
71人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
優衣(プロフ) - 夢じゃなくて、本当になればいいのに😭続き楽しみにしてるよ✨ (5月7日 22時) (レス) @page12 id: fa32b0552b (このIDを非表示/違反報告)
優衣(プロフ) - 夢主ちゃんがまた、消えてしまうんじゃないかって思うと怖い、、、続き楽しみにしてるよ✨ (4月13日 19時) (レス) @page12 id: fa32b0552b (このIDを非表示/違反報告)
寺乃(プロフ) - 優衣さん» コメントありがとう!ごめん結構更新遅れた…優衣ちゃんからのコメント毎回ほんとに嬉しいよ😭💕これからもマイペースすぎると思うけどよろしくね! (3月14日 18時) (レス) id: db666116fc (このIDを非表示/違反報告)
優衣(プロフ) - 夢主ちゃん、どこが悪いのかな❔無一郎あとすこしで退院するんだ😊続き楽しみにしてるよ✨ (3月10日 0時) (レス) @page11 id: fa32b0552b (このIDを非表示/違反報告)
寺乃(プロフ) - シルビア★姉貴さん» ごめぇぇんっ!!だよね!?この新作も前から温めてたやつで…😭😭シルビアちゃんチャットの方見れる??そっちで話したい! (2月28日 16時) (レス) id: 814390a70f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:寺乃 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Mui08081/
作成日時:2024年1月22日 18時