夢_5 ページ14
気づくと、夜が明け始めていたようだった。
締め切られたカーテンから、少し光が差している。
ここは、夢の中だろうか。
はっと思い出して、部屋の扉を開け、部屋から出ようと思うが、ああ、体は動かないんだった、と思い出す。
でも、試すだけ試してみようか。
立ち上がろうと足に力を入れると、驚いたことにすんなり立てた。
そのまま、部屋の出口の方へ向かい、扉をを開ける。
『わっ!びっくりしたー!もう、急に扉開けないでくださいよ』
「A…?」
こんな早朝なのに、Aが着物を着込んで部屋の前に驚いた顔をして立っていた。
「こんなところで何してるんだい?」
『いえ、もうそろそろ、出ようかと思いまして』
そう言うAは、どこかあたふたとしている。
「随分と早いんだね」
あの時は、気づいた時にはいなくなっていて、送り出すことも出来なかったんだっけ、と思い出す。
「…間に合わないかもしれないので。じゃあ、行ってきます。童磨さん」
笑顔でそう言い、
そのまま身を翻して進む。
何が、間に合わないんだろう。
__その手を、あの時掴んでいたら何か変わったんだろうか。
待ってくれ、行かないでくれと言えば、
この子は俺の目の前から姿を消さないでいてくれたんだろうか。
でも、あの時の俺は分かっていたはずだ。
この子がもう戻ってこないかもしれないということも。
逃げる可能性だって、十分あったはずなのに、
なのに、行かせた。
信頼してしまっていたのもあるだろうが、無惨様に、選択を迫られたからだろう。
鬼にもしたくなかった。
死んでしまったら、骨も何も残らない。
存在自体消えてしまうような気がしたから。
殺すなんて、もってのほかだった。
ずっと、俺の横で笑っていて欲しかった。
でも、叶わない。
なら、ここから離れ、どこかで生きていて欲しいと思ってしまった。
本当に、俺らしくない。
でも、目の前から居なくなってしまうのなんて、やっぱり耐えられなくて。
これが夢なら、
「待ってくれ!」
玄関から外に出ようとするAの後ろ姿に呼びかけ、手を掴んだ。
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寺乃(プロフ) - 小姐さん» ぜひ見ていただけると嬉しいですー!✨ (9月20日 19時) (レス) id: db666116fc (このIDを非表示/違反報告)
小姐 - 新作だー!!絶対、見まーすっっっ!!^ ^ (9月18日 18時) (レス) @page3 id: d47bf1e932 (このIDを非表示/違反報告)
寺乃(プロフ) - ほしいも(*^^*)さん» ありがとうございますぅぅぅ!!頑張りまっす! (9月17日 16時) (レス) id: db666116fc (このIDを非表示/違反報告)
ほしいも(*^^*)(プロフ) - 新作おめでとうございます!!応援してますぇぇぇぇ (9月16日 19時) (レス) @page2 id: 88768a4726 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:寺乃 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Mui08081/
作成日時:2023年9月16日 16時