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「うん。で、誰?」
「会社の同期と、その…友だち、
…言わんくて、ごめん。」
良規のマンションの地下の駐車場に着く。
彼がシートベルトを外す音、運転席のドアが閉まる音を聞いて、
自分も降りてドアを閉めると、もう車から離れていた彼
遠くからスマートキーで、施錠した音がやけに響いた。
いつもゆっくりだと思う彼の歩幅は、結構頑張ってるのに追いつけなくて。
エレベーターに乗り込んでようやく彼の横に立つ。
「良規ほんとにごめん、」
彼はじっと私を見下ろすと
「ごめんだけじゃわからんって、」
小さな笑みを携えてそう言い放った。
ピリッとなったエレベーター内に、1回から他の住人の人が乗ってくる。
途端に私たちは、他人のように両端に別れる。
こんな状態でもそんな振る舞いができる、自分が少し怖かった。
こんな時でも、有名人の良規を優先した自分に。
目的の階について、他人を装ってしれっと降りて、後ろでエレベーターが閉まる直前に、掴まれた右手
「ねぇっ、!よしのりっ、いたっいって」
吸い込まれるように閉まった玄関のドアに、離してくれるように伝えれば、話してくれるどころか、グイッと上に上げられて、ドアに押し付けられる。
見上げると、高圧的な彼の視線
これまで、良規にこんなに荒々しく扱われたことはなくて、混乱する。
「よしのり…?」
「…なに?」
こんな彼知らない。
なに?って、普段ならふにゃんと笑いかけてくるはずなのに、今はじっと鋭く射抜かれてる。
「…ごめんなさい、もう二度と」
「ごめんごめんって、
なんで怒ってるかわかってるん?」
「…わかってる…けどごめん、」
声が震えてるのが自分でもわかって、情けなくなる。
「俺を不安にするようなことばっか。
気を引こうって、感じでもないし。」
「ごめん、そんなつもりは…」
「…むかつく」
そう言った彼は、すんなり腕を離したかと思うと 、私の頬を指でなぞり、
「よし、のり?」
「ちょっと黙って、」
唇を合わせた。
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みさき(プロフ) - こちらも一気に読みました!楽しませてもらってます。 (2021年3月18日 16時) (レス) id: 58a6144e55 (このIDを非表示/違反報告)
ぱ た(プロフ) - 続き気になります ‥ ! (2021年2月23日 23時) (レス) id: 99d7cdb867 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆう | 作成日時:2021年1月15日 17時