Half step【3】 (ページ34)

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「もう、大吾の歌は、聞けんの？」

黙って大吾が目を逸らした。

「…勝手やな。」

「ごめん。…踏み込み、すぎた、」

「でも、Aの言う通りやな。
なんも言えへん、悔しいけど。」

ホッとした。
勝手に怒られんじゃないかなと思ってたから。

今まで大吾にそんなことされたことないのに。

「そっか。
どっか行くん？」

「まあ。
夜、食べてへんし出ようと。」

「私も食べ損ねたから、一緒に食べよ。
なに食べたい？」

はあ？と言いながらも、いやとは言わない。

「お酒も飲みたいかも」

「なんでもええよ。好きなようにして。」

そう言って、鍵と財布を持って玄関に向かう大吾。

「え、ちょっと待って。
大吾も行くん？」

「なに？行かんの？」

「彼女に怒られる…？」

「そんなんないって。
…あとそれ、なんのこと？って、」

「正門くんは、大丈夫やと思う。
大吾やし。」

「もう聞いてへんし。」

スーパーの閉店にギリギリ間に合ったので駆け込んで、お惣菜を買ってきて、あとは味噌汁を作った。

少食だと思ってた大吾は想像してたよりも食べていて、ちょっと安心した。

「楽しかった！
正門くんが怒るから、あんまりお酒も飲んでへんかったし。」

「…ええん？
彼氏になんも言わんとこんなはめ外して。」

「羽目って、…ただちょっと立てへんくなってるだけ。
バレへんよ。」

「Aは酔ってると、よお笑うし口調がゆっくりなるからすぐバレんで」

そうまっすぐ目を見つめられたまま言われる。

「まだ酔ってんな。」

その後大吾に入っておいでと言われてお風呂に入ってる途中で、正門くんは帰宅してたみたいで、出てきたらすぐに髪の毛を乾かされた。

「どうしたん？」

と聞いたら、やりたかったから、とかそんな理由で誤魔化されたけど。

入れ違いでお風呂に入った彼。
リビングに戻ったらもう大吾はいなくて、広い家でひとりで見るテレビはあんまり面白くなかった。