Half step【3】 (ページ3)

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大吾はある日突然私の前から姿を消した。

Lazy boysの次のライブは未定のまま、最後のライブから２ヶ月が経った。

「大晴の就活と、小島の実習が終わるまではね、」

そう話す正門くんは少し寂しそうだった。

春から4回生の福本くんと小島くんは、福本くんは就職活動中、小島くんは夏前から教育実習を控えており、かなり忙しいらしい。

それを危惧しての、大吾からの、一時的な活動休止の話だったらしいのやけど、

「かなり急やったし、『そうと決まったなら明日から、』みたいな…」

戸惑いの方が多かったみたいで、彼はいつもよりゆっくりとした速度で話した。

ほんとは大吾のこともっと聞きたかったけど、なんとなく聞いちゃダメな気がして聞けなかった。

「前はそういうこと、なかったの？…直近で言うと、佐野くんの大学入学とか？」

「晶哉は確か、夏休み中に頑張っとったみたいで、秋くらいからは、普通に活動してたな…」

「大晴は大学入ってから仲間になったし、小島は…どやったっけ？」

とぼけたようなことを言う彼に思わずツッコむ。

「えぇ？どやったって…小島くんの忘れたん？(笑)」

「小島はなんだかんだ昔からおるから。メンバーになる前はファンとして足運んでくれてたし。」

そんな話、初めて聞いたかも。
小島くんに今度詳しく聞いてみよ、昔の正門くんのこと。

考え事をしてたから、彼が楽しそうな顔でこっちを見てたことに気づかなかった。

「なに？」

「ううん、なんもないよ。」

「…嘘、絶対なんかある顔してる。
なに、隠してんの？」

いたずらしたみたいな顔をしたから問い詰めたら、

「ほんまになんも隠してないよ？(笑)
ふふ、可愛い。」

なんて言う。

正門くんは、親しい人にはとことん甘やかすタイプらしい。
こんなに私に可愛い可愛い言ってくれるのなんか、おばあちゃんか彼くらいしかいない。

…私の方が年上なのに、なんか困る。