Half step【3】 (ページ44)

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「良規っ！待って！」

いつだったか、酔った良規にこんなことされかけたことがある。

あの時のなにを言っても、止めてくれない。

いや、私の声なんて聞こえてないんじゃないかと思う彼が、今もいた。

パチンと外された背中のプラホック

締め付けを失ったカップを口で咥えて外した彼が、私と目線を合わせた。

「……ぃや、」

震える声で言うと、ようやく彼が答える。

「…いや？…ほんまに？」

一瞬視線を合わせて細めた目はすぐに私の身体しか目に入らなくなる。

数ヶ月前、待つと言った

彼はそこにはいないと思った。

＂このまま本当にするん…？＂

条件反射みたいに、頭よりも早く身体が動いた。

「っ！…た、」

「……ごめん、」

ドン、と衝撃のあと、小さく漏れた彼の言葉に

一言だけ返した。

「だから、なにがごめん？

ごめんだけじゃわからん、」

足元まで下がった男と、その下に横たわる服が乱れた女

「………ごめん、できない。」

その光景すら受け入れられなくて、片腕で顔を覆った。

ゆっくりと、私の服を離す彼

身体を跨いでいた身体を起き上がらせて、未だに床に横になる私に対して口を開いた。

「俺より、元カレの方がよかった？」

驚いて、腕をずらして起き上がると

彼の声と表情は、冗談で言っている風ではなくて、本気なんだと悟る。

「ちが、、う…」

私は、そう言い返すので精一杯だった。

「違うくないやん。
俺を突き飛ばした、それが事実。」

足元でぐちゃぐちゃになってた荷物を私に渡しながら、そう吐き捨てるように言う。

「Aちゃんさぁ、…

ほんまは俺のこと、好きちゃうんやろ？」

「……なんで、？」

いつだったか、私が彼に言った言葉は

言い返されてみると、かなりグサッと、破壊力があることに気づいた。

良規も、そんな気持ちだったのかと気づくと同時に、

じゃあ、良規は意図して、私を苦しめるために言ったのか？と考えてしまって

「……良規だって、」

「なに？」

「大事にするって、口だけ。

…実際やってる事、なんなん、！」

「………ごめん」

長い沈黙のあと、ひと言だけ発した彼

そのまま私を置いて、自分の部屋に入って行くと、タオルケットを1枚持って帰ってきて

「ひとりにして。」

そう言い残して再びいなくなった。