Half step【3】 (ページ16)

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その日の夜、実家にいると、正門くんから電話がかかってきた。

「もしもし？」

『もしもし、何してたん？』

リビングからスマホ片手に歩き出した。

別にリビングでもいいんやけど、移動したのはたぶん、からかわれるのが嫌やったから。

「今、実家帰ってきてる。お父さんが誕生日で。」

『え、今お父さんは？いいん…？』

「お風呂入ってるから大丈夫。」

『そう。』

「お父さん代わろうか？」

脅しで言ったつもりだった。
まさか、さすがに本気でそんなことする気はない。

別に驚きすぎて倒れるとこはないけど、期待値が上がりすぎるのも可哀想だし

なのに、

『ええよ？娘さんを僕にください、って言おか？』

少しも躊躇わずに、サラッと言ってしまう。
そんな彼に、そろそろ慣れてしまえば楽なのに、なんで出来ないんだろう。

本気か冗談なのかも、声だけだからわからない。

けど、たぶん

「…定型文過ぎて、嘘っぽい。」

『本気やのに。』

私に渡されたあの紙が証拠。

「ねぇ、今時間いい？」

『ええよ、今帰ってきたとこやし。
…どうしたん？』

リビングから、2階の自室まで移動する。

部屋に入ると、暖房をつけてなかったそこはかなりヒヤッとした。

窓のカーテンを閉め終わると、気を引き締めて口を開く。

「…大吾は、どこ？」