Half step (ページ10)

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家族が増えたからと言って、私の生活はそんなに変わらなかった。

いつも通り仕事に行って、帰りにたまに飲みに行って、1人の家に帰って寝て、また次の日が来る。

佐倉ちゃんだって、お父さんが再婚した、そう言ったら初めはすごい勢いで食いついてきたけど、そのうちなんの興味も示さなくなった。

そして今日、佐倉ちゃんが連れてってくれたお店は、男の人が多いと言っていた割に、大したことなくて、言ってみれば、普通の店だった。

オープンキッチンの厨房の中に男の人2人と女の人1人、ホールにバイトらしき女の子2人くらいで、なんで誘ったの？そう聞いたら、どうやら前に言った日は大学生らしき男の子のグループがいて、店員もオール男子だったらしい。

「大学生か…」

「Aさん、年下ダメですもんね〜」

「え、なんで、知ってんの…？」

え、私、あの息子の話したっけ…？
なんて、口がどもった。

「Aさんって、1人でなんでも出来ます！とか言ってるけど、ほんとは誰かに甘えたいとか思ってるじゃないですか〜？
年下相手にはそんなの無理ですよ！」

なんだそっちか、なんて安心したのもつかの間、結構的確なこと言われて、普通にビビる。

「それに、お姉ちゃんだから？
家の事とかも責任感じちゃってるんでしょ？
そういうのもひっくるめて、『大丈夫やで。』みたいな人を心の奥では求めてるはず。」

まさかの、図星、かもしれない。

「年下が可愛いとは思うんだけどね、それが好きかって言われたらそれは…
…ん？」

金曜の夜だから？

愚痴って少々お酒が進んでしまったようだ。

目の前に見えてはいけないものが見えている気がする。

「佐倉ちゃんごめん、私幻覚が見え始めたから帰るわ。」

いつか見た、真っ黒なパンツと丈の長いロングコート。

フードこそ被ってないものの真っ黒な髪に覆われて、それはもう…

「可愛くない年下が見える…」