Half step (ページ46)

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『11月の最後の土曜、空いてますか？』

正門くんと連絡先を交換したものの、結局予定が立たず、誕生日会は自然消滅していた。

別に落ち込みはしなかった。

25歳の誕生日を祝われても嬉しくもないし、そもそも祝い合うほど仲良くもないし。

で、今回の連絡が来たのは、朝晩がだいぶ寒くなって上着がジャケットからコートに変わった、11月中旬。

『次のライブ、ワンマンではないんですが。』

手帳をめくると、1週前は三連休で予定が入っていたけれど、その週は真っ白
考えてみれば、前に行ったのはもう2ヶ月も前。
すぐさま

「チケット買います！」

と返信した。

数日後、
仕事終わりに、今日は何を食べようかと、たくさんの料理とお酒を思い浮かべながら、今季初めてのマフラーに顔をうずめ、自動ドアを出たところ

見覚えのある、風格…

くるっと振り向いた顔もまたマフラーに埋められていて、白い肌と相まって女子みたい

ってそこじゃなくて！

「！？な、なんでいんの！？」

コートのポケットに手を突っ込んで立っていたのは大吾だった。

「いつやったか、お店で爆睡した時に鞄から社員証見えたもんで。」

「…いや、職場の場所まで見えへんやろ…！」

「じゃあ、何かの時のために、勤め先チェックしときました。」

ほら？役に立ったやろ？、とでも言いそうな顔をすると歩き出した。

「チケット。正門に頼まれた。」

ペラっと1枚財布から出されたそれ。

まさかこんな渡され方されるとは思っておらず、受け取ってからどうするべきかしばし迷う。