Half step (ページ27)

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Side 大吾

「はい、頼まれとったロックです、っと。」

そう言って、睨み合ってた俺らの間に割り込んできた男の腕。

「なに、またケンカ？」

カウンターテーブルに置かれたロックグラス。

「またって、…別にケンカちゃうし。」

ひとくちそのグラスに口をつけると、やはりロックらしく濃い液体が流れてくる。

喉を通ると、アルコールが濃いだけあって、少し熱い。

「Aさんも、って、寝たん？」

「はあ？」

そんなはずは無い。

さっきまで、生意気な口を聞いてきたのは間違えなくこれで、

でも、ぱっと顔を向けると、腕の上に頭を置いて目を閉じていた。

「寝んの早すぎやろ。」

てか、また酔ってたんかよ。

…毎度毎度自分を制御できひんくて、ほんまだらしないやつ

「Aさんの住んでるとこわかる？」

「知らん。…そもそも何区なんかも、なんなら市内なんかも知らんわ」

「まあ、閉店までには起きるか、」

「知るか。俺は弟やないし。」

「じゃあ、かおりさん呼ぶ？」

さっきまでの俺らの会話は聞いてなかったらしい。

俺が黙り込むと、話題を変えた。

「今日は早かったね。」

俺が家で寝とったわけやないって知ってるこいつは、そう言った。

「…うん。」

「おかえり」

そう言うと、俺の前にチャンジャを置いた。

俺は飲み進め、いい感じに酔いが回ってきたというのに
1時間経っても起きる気配がない隣のそれ。

「今日女の子入ってへんし、ちょっと大吾、起こしといて。」

セクハラやらが厳しい昨今。

さすがに酔っ払ってる客でも、男が女を叩き起すのは、まずいらしい。

向こうでは、「ラストオーダーですけど、どうしますか？」なんて声が聞こえてくる。

さぁて、どうすんねんこれ、と思いながら、眉をひそめた。