Half step (ページ21)

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「かおりさん、冷蔵庫ありがとうございました。」

「あぁ、あれちゃんと動いとる？」

「ちょうどもうちょっと大きいの欲しいなぁと思っとったんで、助かりました。」

実家で使ってた、たぶん5年ものくらいの冷蔵庫を持ってくると言ったら喜んでた正門。

俺からしたら、男ふたりの暮らしにこんなでかいの要らんやろって思うんやけど。

「よかった。
ごめんね正門くん、いつも大吾がお世話になって。」

「いいえ、助かってます。
お風呂も掃除してくれるし、食事の後片付けもしといてくれるし。
かおりさんの育て方がよかったからです。」

なんやこの、授業参観みたいな感じ。

でもそしたら、先生が正門ってことになるから、やめとこう。

目の前では、小島が斗亜に絡んでる。

こいつのライブ終わりのはしゃぎようは半端なかった。

大晴と晶哉と3人でシャワー浴びて、
…って別にいつも通りの事やな。

で、その隣、

誰と喋ることもなく、ただそこにいるだけ。

「なんで来てん、」

正しくは、「何しに来てん」

どうせからかいにでも来たんやろ、そう思ったから。

俺はこの事を打ち明けるつもりはなかった。
大して深い付き合いにもならん相手にこうやって、自分を披露するような、自分の身を削ることは嫌いや。

「黙って来たんは謝る。」

「ふーん」

「けど、楽しかったよ今日は。
今度からはちゃんとチケット取って来たい。」

…へぇ、

「それじゃあかんの？」

なんやろう、この気持ちは。

…あぁ思い出した。

これは、オカンに初めて打ち明けたあの時と、同じ感情かもしれん

別に認めてもらいたかった訳やない。

それでも、否定しなかった。

自分でも、顔が緩んだとわかって、急いで誤魔化した。