魔法が解けても側にいて King&Prince (ページ10)

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Moscow Mule - Kaito.T ページ10

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「海人なんてきらい」

何でよ、って私の右手に手を重ねる海人。

少し冷たいことを言うと動揺して、子犬のような濡れた瞳で私を見るのが好きで、つい意地悪を重ねてしまう

「俺は好き」
「私は嫌い」
「なんで」

海人が重ねていた手を離して、小さくため息を吐く

少し言い過ぎただろうか。でも、意地悪で意地っ張りな私はもう引き下がれない。

「だって昨日、ドラマ出てた女優さんのことずっと可愛いって言ってた」

そんなことを引きずってしまう私の方が、海人よりよっぽど余裕がない。

でも、AAって名前を呼んで一緒に居てくれる海人が、他の人を可愛いって言うなんて今まで無かったのだ。

「Aもその人のこと可愛いって言ってた」
「私が言うのはいいの」
「じゃあ相手役の俳優さんのことかっこいいって言ってた」
「言ってない」

……嘘。言った。

でもそれも、海人に妬いてほしいがための嘘で。

これ以上言い返せない私と、呆れたように頬杖をつく海人の間を、クーラーの風と時間だけが流れる。

「…お客様。ご注文は何にいたしましょうか」

バーテンダーも、少し困った顔をしている。そういえば口喧嘩に必死で、注文をしていなかった。

「あー……どうしよう」

海人は？と聞けない私と、Aは？と聞けない海人

「それでは、私からお2人に1杯、お作りしてもよろしいですか？」

バーテンダーの問いかけに、私と海人は揃って頷いた。

＊