３８ ページ40
言われるままについて行き、布団を一枚敷いて、そこを隠すように衝立が置かれただけの質素な部屋に入る。
この部屋は普段、大きな怪我をした者の個人治療室としてしか使われていないのだが、俺は結構頻繁にお世話になっている。
そして、この部屋で俺の手当をするのは決まって医療班の班長だけだった。
「今回はまた、たいそう派手にやられたご様子で。」
「すまない。修正が利かなくなったんだ。気にはしていたんだがな.....
まぁ、己の力を過信しすぎていたというのはあるな。」
その場しのぎでてきとうに巻いた布がどうやら傷口に張り付いていたようで、解かれる時 激痛が走った。
きちんとした手順で止血され、消毒用の液体をかけられる。
止血が終わる頃には、そこにはもう殆ど痛覚は無く、ただ何らかの違和感があるだけだった。
自分の片腕に丁寧に包帯が巻かれていくのを眺めていて、ふと口を開いた。
「......いつもすまないな。お前にばかり。」
班長は一瞬動きを止め、こちらを見たが、すぐに手元に視線を戻した。
「何を今更。肌を大幅に露出させなければならない様な治療は私に任せる、と。
貴方様がおっしゃったんじゃありませんか。」
「...........まぁ、とてもじゃ無いが人に見せられたものではないからな。」
「そうですか？別に、素敵だと思いますけれどね。
この紋様は貴方様のお力の象徴でしょうに。」
「あまり嬉しくない褒め言葉だな。」
「あら、皮肉のつもりだったんですがね。」
「お前は......」
不満げな声をあげると、ふふふ、と控えめな笑い声が返ってくる。
俺の背中に大きく書かれた紋様。
物心ついた頃から、
俺がこの力に気付いた頃からずっとある。
これだけは何をしても消せなかった。
ただただ、確かにそこに存在する気持ちの悪い痣の様な紋様が、背中一面に広がっている。
幼い頃、母にこの事を相談した事があった。
母は優しく微笑んで、「父さんと同じ、力の証だ」と言った。
でも、俺はこんな力いらなかった。
今では便利だと思っているし、実際役にも立つ。
しかし、当時の俺からすれば皆から避けられるし、同じ様な年頃の奴にいじめられるから、
嫌で嫌でしかたなかった。
唯一の救いと言えば、父さんが残してくれた書物だ。
父さんはこの力について、いろいろと書き残してくれていた。
その中にあった獣が、今俺の持つ使いだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 29人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
句読点 - あざまっす！が、頑張ります！！w (2016年12月26日 16時) (
レス) id: 5463a90292 (このIDを非表示/違反報告)
^ ^ - おもしろいと思います。更新お待ちしています。 (2016年12月25日 23時) (レス) id: 40794b7b49 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：句読点 | 作成日時：2016年8月13日 20時
