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半ばため息をつきながら、俺は懐から苦無を出そうとした。
しかし、
「Aっ!」
元就が、俺を庇うようにして後ろへ出てきた。
「っ!?馬鹿!お前だ!!」
そう叫んだ時には、もう体が動いていた。
元就を横から抱くようにして、矢からその身を守る。
もしこの状況で、俺が1人であるならば 身体の一部を液状化させたり、避ける事も可能だろう。
しかし、今 俺が避けてしまえば元就に当たるのは一目瞭然だった。
考える必要なんて無い。
俺は俺の仕事をするだけだ。
「っ...」
ドッ、と鈍い音がした後、じわりじわり と痛みが広がってくる。
矢は深々と俺の左腕に突き刺さったが、貫通はしなかった。
矢を引き抜き、ずくんずくん と痛む腕に顔を歪ませながら片手で昇蛟(ショウコウ)を呼ぶ。
大きくうねる太い胴体には、びっしりと鱗が張り付いており、鋭利な爪を持つ二本の足。
大きな角に白い髭。鋼のような鬣が生えている。大蛇と言うよりは龍に近かった。
その背に元就をのせ、昇蛟に指示を出す。
「この方を本陣へ御連れしろ。なるべく上を行け。」
___御意。
昇蛟は、短く返事をすると元就を落としてしまわないようにゆっくりと上昇した。
見上げる高さまで上り、進みだそうとした時、元就がぐいっと鬣を引っ張った。
「待て。A、貴様も戻れ。」
___.......。
進行を妨げられ、不服気な表情をして横目で元就を見る昇蛟。
「あーあー、もう。イジメないでやって下さいよ。
俺はもうちょっとやる事あるんでね。まぁ案じなさんな。すぐ戻りますから。」
元就に向け、薄く苦笑いをみせた後、再度 行け、と指示を出す。
今度こそ、と言わんばかりに昇蛟は空を翔ていった。
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句読点 - あざまっす!が、頑張ります!!w (2016年12月26日 16時) (レス) id: 5463a90292 (このIDを非表示/違反報告)
^ ^ - おもしろいと思います。更新お待ちしています。 (2016年12月25日 23時) (レス) id: 40794b7b49 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:句読点 | 作成日時:2016年8月13日 20時