イヤーマフの中で２ (ページ6)

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恋愛下手ページ6

阿部side

彼女の瞳が大きく揺れた。

紛れもなく本当に思っていることを言っているだけで、
俺が成長して、胸を張って俺の彼女だって言えるようになるまでなんとか待っててほしかった。

『…ダメ、ですか。』

恋愛の駆け引きとかそういうものすらわからない俺は、良い方向に持っていくどころか、悪い方向に持って行こうとしている。

Aさんは儚くて、綺麗な笑顔を見せて

「ダメ、です。笑」

と言った。

「お願いだから。もう迷惑かけたくないんです。笑」

「阿部さんを悲しませたくない。私のせいで、阿部さんの人生を壊したくない。」

「耳が聞こえないって、聴者の人は理解してくれない、っ、私がどんなに叫びたくても、阿部さんに声を届けたくても、」

「届かない、って、分かってるから、」

「ごめんなさい。」

彼女の涙が、手話をしている手にぽとん、と落ちる。

引き留めたつもりだったけど、終わりだったのかな、俺たち。

もう納得させられないということは分かっていた。その時ショックで心に大きく穴が空いた俺は、

『ごめんなさい。じゃあ、また。』って言ってAさんとアンティークでさよならをした。

もう手話を使う事はそうそうないな。

“好き”って手話も、誰かに向けて送る事はできなかったし、
“好き”って手話を、彼女から俺に向けて送られる事はなかった。

せっかくめめに譲ってもらえたって思ったのに、俺がそのチャンスをぐちゃぐちゃにしたなんて、どんだけ恋愛下手なんだよ。

『ねえ、めめ？』

『ちょっと話、聞いて欲しい。』

恋愛上手のめめに電話をかけた。

バカやらアホやら、なんでもいいから、俺の行動を怒ってほしかった。

一番自分が分かっているけど、自分で口に出せなかったから。